第21話 ギルドマスター
「しかし、いつまで降りるんだこの階段は?」
「一番下までは山一つ分あるからな」
どうやら山の内側を降りているということなのだろう。
一定の間隔で蝋燭が置いてある為かなり見やすく階段を降りれる。
ということはどこかに一定間隔で通気口もあることの証明にもなっている。
「ここの一連の建築物や構造物はこのギルドマスターであるレイモンドが作ったものだ」
「なに!マスター自らが作ったのか?」
建築のスペシャリストでギルドマスターってどんな感じの人なのか?
俄然、興味が湧いてきた。
「じゃあ急ぐとしよう!!」
と言いながら早めに手すりすらない階段を結構なスピードで降りていく。一つ間違えれば真っ逆さまである。
体幹も鍛えてあるので多少のぐらつきもないからできる技である。しかし、シャンタルはものの見事についてきている。
慣れもあるだろうが見事な体幹である。
「下が見えてきたぞ」
「ああ」
言われるまでもなく漸く最下層が見えてきた。
その下までたどり着くと目の前には巨大な扉がどーんと構えていた。
「これの開け方はわかるか?」
「ん?それに関しては楽勝だ!」
と言って俺は扉の前まで歩みを進めて目の前で止まった。
呼吸法を行い、丹田に力を籠める。
「お、おいな、何をする気だ?!」
「こうするのさ!神頑流倒木の激!!」
そういうと俺は力を拳に籠めて一気に突きを放った。
それをまともに受けた扉は開くどころかそのまま蝶番をぶち壊し奥の壁まで飛んでいった。すさまじい轟音とともに!
「・・・・えっ!えええええーーーー」
この俺のやったことに思考がついていかないシャンタルは叫び声で応えた感じになった。
そして、俺がシャンタルに向かって飛んで行った扉の方を指さすとシャンタルはそちらの方を見た。
「ん?!」
「あ、あれは・・・・サポー・・・か?」
「サポー?」
俺が聞き返したことには気づかずシャンタルは吹き飛んだ扉の方角へ走っていった。
俺もそれに続く。
「ま、間違いない!この男は隠れ家ギルドの第2番隊師団長のサポーだ」
「師団長?」
「ということはここは軍隊のギルドなのか?」
「いや違う。国には属していない傭兵ギルドだ」
傭兵の集まりがこの隠れ家に住んでいるということか。
それで通称”隠れ家ギルド”と呼ばれているということか。
「ど、どういうことだ?」
「どうもこうもない。扉の向こう側で俺を狙って待ち構えていたので先制の一撃をくらわした」
「そんな気配なんて・・・」
「そうだな、かなり抑え込んでいた。この男の実力がわかるというものだろう。だが俺には通用しなかった。それだけのことだ」
「ははははははははは!!」
いきなりの笑い声に二人がそちらの方を見返した。すると、
「レイモンド!!」
「久しいなシャンタル!!無事息災で良かった」
「おい!!この男が隠れ家ギルドマスターのレイモンドだ」
そのレイモンドを見やると、背がやや小さいが、体はごつい。かなりの量のあご髭を蓄えている。
うーん、なんと言ったかよくゲームやらファンタジーに出てきた・・・?とか考えていると
「なんだ?ドワーフがそんなに珍しいのか?」
「そう、それだ!!ドワーフ。うん!そうドワーフだな」
「はぁ?」
意味不明な会話にレイモンドはついていけてないようだ。当たり前のことではあるけども・・・。
ごほっと嘘の咳払いをして話をつづけた。
「しかし、これは手荒い歓迎だと思うのだが?」
「これに関してはすまないと思っている。だがお前さんのかぐわしい・・・いや失礼!その匂いには彼らのような獣人には耐えがたいものであることも事実だろう」
「その食糧に反撃されるなど思ってもいなかったか?」
「ははははは!!その件に関しては本当にすまなかった!これからはしっかりあんたのことは客人としてもてなす。それで許してはくれんか」
「わかった!あんたを信用しよう!!」
シャンタルが結構緊迫した状況に辟易していた。
それは同時にこのレイモンドという人物がどのような人物かを理解したのでそれ以上は言わないことにした。
「ではこちらでもてなしをしたいのだが」
「それは結構!!すぐにでも話したい要件がある」
「ならばもてなしを受けながらでも話はできるのではないのかね?」
はやる気持ちを相手に見透かされた感がした。
やはりこの男はこのギルドマスターにふさわしい人物なのであることが窺い知れるというものだ。
「確かに貴殿のいう通りだ。では場所を移してもらえると助かる」
「ふむ、失礼を承知で言わせてもらうが、お前さんはただのブタではないのはその力だけではないというのがよくわかった」
「実際、シャンタルが手紙を送ってきてくれた時には信じられなかったんだが・・。」
「レフ殿はまさしく戦士だ!!」
シャンタルは自分のことのように俺のことを言ってくれたが知らないうちにお前から殿になっているのはなんかむずかゆく感じた。
レイモンドがうやうやしく礼をしてこちらですと言うと俺たちはその方角に向かって歩みを進めた。
これからの奪還作戦を考えるために。
(第22話につづく)
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