第19話 トレーニング

俺たちはシャンタルが所属しているというギルドに向かって西へ向かっている。

その道程で俺は神頑流独自のトレーニング術を行っている。今回は短い期間なのでかなり負荷をかけて行うことにしている。

身体もかなりついていけるようになったので、多少の無理もできるようにはなってい

るためだ。


「ん?どうしたシャンタル?」


シャンタルは俺が道すがら行っているトレーニングに興味があるらしい。

あの小屋の時も興味があったのは知っている。

なので少し意地悪を言ってみた。


「我はお前など見てはいないぞ」


誰もこちらを見ているとは言っていないんだが・・・。

やはり気にはしているようだ。

しかし、俺も自分のことが手一杯ではあったのであまりその辺の話はしないようにして集中した。


この二日間は俺はトレーニング。シャンタルは襲い掛かってくる山賊などを相手にしてそれぞれの思惑で底上げを行っていた。

そんななか、


「くそーーーーーー!!」

「!???」


急に大声を出したシャンタルにさすがの俺もビクッとなった。


「ど・どうしたんだ」


慌てて聞き返した。


「我はあんな弱っちいのを相手にしていて果たして強くなっているのであろうか?」

「そういうことか!ここははっきり言おう!なってないな」

「くっ!」


シャンタルは俺を睨みつけてきたが事実だから仕方がない。


「シャンタルもなにかしらの槍術の使い手であれば更なる高みを望めるのではないのか?」

「貴様はいつも人の痛いところをついてくるな」

「我のジアゼパム槍術は未完成なのだ」

「?」

「これ以上言わせるな。我は途中で投げ出してきたのだ」


うーん!それを自慢げに話されてもなんとも言えないのではあるが・・・。

しかし彼女にはこれ以上の施策はないということであるのはわかった。


「了解した!では俺の神頑流で良ければ槍の使い手としてレベルアップすることはできると思うがどうだ?」


彼女は素直にうなずきはしなかったものの、それでは仕方ないなとつぶやいて受容してきた。

彼女はもうちょっと素直になるべきなのでは?と思う俺だった・・・。


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そこからは俺は自分のトレーニングと同時にシャンタルの槍の手ほどきも行うこととなった。

彼女の槍さばきにはかなりスキがあるのは前々から気にはなっていた。

その理由はジアゼパム槍術を途中で投げ出していたとは・・・。

変に納得してしまった。


彼女のそのスキの部分を改善するだけでもかなりの効果が見込めると思ったのでそこを中心に改善を行った。


「おおおおおお」

「こ、これは」


今までの突きの改善を行ったところ、やたらと気に入って突きばかりしている。

中身は子供か?

埒もないことを考えていると。


「お前のこの槍術はすごいな!」


本当におもちゃを与えられた子供のようにはしゃいでいた・・・。

これが本当の彼女なのだろう!!


そして、俺はさらにトレーニングの強化。彼女は槍さばきの向上を図った。

ギルドまであと一日ほどで到着しようとしていた時、その一日前ぐらいから後ろからの気配に気づいていた。


「そろそろだとは思っていたが来たな!」

「そのようだ」


俺たちが同時に見た方角から現れたのは以前出会った豚、もといオークだった。

今度は仲間のオークを2人連れてきている。


「久しぶりだなブタ野郎!お前の臭いがプンプンしてたんで追っかけてきたぜ」

「誰も頼んでないがな!」

「な・なに~このブタ野郎の分際で俺様にそのような口の利き方をするとはいい度胸だな。あ~ん!!」


ちょっとした挑発にすぐに乗っかってくるところが前回からの成長を感じさせなかった。


「前はそそくさと逃げ出すので精一杯だったブタ野郎がしばらく見ないうちに偉そうに吠えるようになったものだ。しかし今回は前回と違って俺の優秀な仲間を2人も連れてきているぞ。今度は逃げることはできん。覚悟をして俺の胃袋におさまりやがれ!!」

「よくしゃべる豚野郎だな!あの時は逃げるのが最良であったから逃げたのだ!だが、今回は違うぞ!」

「ぶ・ぶはははははは」


豚ども、いやオークどもが一斉に笑い出した。


「何を言ってやがるんだか全く見当もつかないがまさしく我らと戦うってことらしいぞ!なあお前ら!」

「ぶはははははは」


また豚の笑いの合唱が始まった。これ以上は耐えられなかった。

それはもう一人の俺の連れもそうであったらしい。


「おい、豚野郎どもいい加減その汚らしい笑い声をやめないと地獄の門をくぐることになるぞ!!」

「うん?人狼か?」

「たしか人狼は全滅したって噂で聞いたことがあったんだがなぜお前はここにいやがるんだ?」


ブチ!!っと音がしたような気がした。

彼女から発する殺気がそれを証明していた。

俺はそれを手で制すると彼女は少し理性を取り戻したようだ。


「笑い方も恰好も見飽きた!逝くがいい!!」


言うや否や俺の拳がオークの腹を貫いていた。


(第20話へつづく)

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