第8話 鼠の町
俺は森を抜けてから東へ東へ進んだ。
先々で商人として情報をもらいながらの旅をした。
今までのように逃避行ではなかったので自分の焦りを確実に冷静なものに変えつつあった。
「この近くにはネズー族が住むデスケードという町があるぞ」
この、ウサギのような亜人も商人のようだった!こいつが言うには、どうやら、亜人にはそれぞれ種族名が存在するらしい。ネズー族ってなんだとは思ったが各地を廻っている商人が知らないのもおかしいので、
「ほう、そうですよね。ではデスケードに久しぶりに寄ろうと思います」
できるだけ下手にでて相手の気分をよくさせて情報を出来るだけ抜き取る作戦を展開している。
ここは、湖畔にある旅人の休憩所みたいな場所だ。
「まあ、ここら辺りでは交通の要衝でもあるし、いろいろな取引が行われているので行って損はしないとは思うけどな」
ウサギ亜人は段々気分がよくなって口がなめらかになってきていた。
森で罠にかかった亜人が持っていた結構高級なお酒を振舞ったからだ。
「でもよ!最近なんかブタ人間の野郎のなかにやたらと捕まえれないクソがいるらしい」
「ほ、ほおー!そのブタ人間には種族名ってありましたっけ?」
酔っていることをいいことに少し大胆に聞いてみた。
「馬鹿言え!あんな飯のネタにしかならない奴らに種族名なんてありがたいものがあるわけないだろうが!!」
「!?」
一瞬にして剣に手が差し掛かったところでとりあえず怒りをおさえた。
少し険悪な雰囲気を察したウサギ人間が不信感を抱き始めたので
「それでは私はこれで失礼させていただきます。また、どこかでお会いしましょう!」
無理やり笑顔をつくって高級なお酒を置いてその場をそうそうと立ち去った。
酒など俺には必要のないものだからほしいやつにくれてやる方がちゃんと始末してくれるし、十分に役にたってくれた。
「あっちの方角だな!」
さらなる東の方角を眺めて朝焼けが野に山に光を照らしだした。
この世界の美しさをこの時初めて見た感じがした。
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そこからさらに2日間かかって見えてきたのがウサギ亜人が言っていたネズー族の町デスケードだ。
「やっと、着いたか!」
トータルあの森から約5日間歩き通しでデスケードにたどり着いた。
もちろん、多少の休憩や睡眠はとったが狙われている存在であることに変わりはないのでしっかりと休憩や睡眠はとれなかった。
「しかし、この程度のことでは眠気は襲ってくることはない。前の世界で培ったノウハウが活かされているからな」
「だてに、最強の兵法である神頑流は極めていない!!」
「さて、あの場所に俺が探し求めるものがあるかどうかが問題ではある。あればすぐに購入してあの場所に戻らなければならない」
俺は、デスケードの門に差し掛かった。するとそこにいた門番が両方ともネズミの亜人であった。
うーんネズー族というのもなんか今考えると微妙・・・・?
「どうも、ご苦労様です。」
「ん?見たことない顔だな。お前通行証は持っているよな?」
「かなり遠方からこちらに寄らせていただいております。初めて訪れてますので見たことないのは当然でございます」
「ふーん」
特段興味のなさそうな感じで門番が答えると手を出してきた。
要するに通行証を早く見せろということらしい。
「かしこまりました。少しお待ちください。」
俺はこういうことも想定にいれていたので亜人の懐からそれらしいものを持っていた。
しかし、話し言葉が普通に通用するこの世界でも書いてあることまで実は理解が出来ていない。
(ここであのウサギ野郎に高級な酒を振舞った甲斐が出てくるというものだ)
そう、あのウサギ亜人に通行証らしいものを確認させて世界ギルドと呼ばれる正式な組織が発行している通行証があることを突き止めた。
この通行証はどこの場所でも入ることは許されるが滞在期間が決められるらしい。
(要するに就労ビザみたいなものなんだろう!)
俺はそれを門番に見せた。
するとそれを一瞥した門番は面倒くさそうに開門した。
「では失礼いたします」
あくまで笑顔を絶やさず門番にお礼を言って中に入ることができた。
第一関門はなんなく突破できた。
「さあ、ここからが勝負だな!俺の求めているものがなければ何も意味がない!!」
俺の新たなる一歩が踏み出されることとなった。
その新たなる気持ちになったその瞬間に目に入ったのは俺の仲間?の死体の山であった。
「さあ、安いよ安いよー」
「ブタ人間新鮮だよー」
まさに魚を売る魚屋のごとく声掛けをするネズー族のブタ人間屋のおっさんが次に目に映った。
「そこの商人のおにいさん!どうかな?一回食べたらやみつきになることうけあいだよー」
(こいつは誰に向かって売りつけていやがるんだ?知らないとはいえ!!)
さらにそのおっさんの後ろを見たときさらに異常な光景を目の当たりにした。
(第9話につづく)
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