BACK ME

平 遊

戻ろっか

「じゃあ・・・・そろそろ戻ろっか。」

休日恒例の、チャミこと内田雅美とのデートの帰り道。

いつもの分かれ道で、チャミの奴がごく普通にそう言ったから。

俺も、ごく普通に、こう返したんだ。

「あぁ。じゃあ、な。」

確かに、ほんの少し違和感を覚えた事は、認める。

ほんの少し、そう言ったチャミが寂しそうな顔をしていたような気もした。

だが、ほんの少しだ。

だから多分、別れ際の俺は、笑顔さえ浮かべていたに違いない。

チャミの心情など、推し量ることも無く。

その翌週。

チャミからの連絡は、一度も無かった。

その翌週も。

そのまた翌週も。


俺、火宮朔は、某会社の社員として勤めている。

社員数はそう多くは無いが、割と働きやすい会社で気に入っている。

チャミは、俺たちの会社に出入りしているシステム会社のSEだ。

どういう訳か、俺にかなり惚れてしまったらしい。

出会ってすぐの頃から、猛烈に言い寄られ続け、今に至っている。

チャミは確かに可愛い。

可愛いが、正直俺の好みのタイプとは程遠く・・・・それでも、チャミの勢いに押される形で、俺たちは付き合い始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る