第49話 輝かしき王アーサー4
継承の儀式という事もあり、外はかけつけてきた市民たちでにぎわっていた。儀式は大きな広場があ行われる予定であり、正面には豪華な貴賓席があり、そこには貴族たちが、そして、広場を囲むようにして新しい王をみようとする民衆たちがかけつけていた。広場の中に入らないように騎士たちが警護をしているがその数は市民たちに比べてかなり少ない。多発しているアンデット達の対応に人員を割かれているのである。そのこともあり、アーサー様が継承の儀式の延期を申し出たが、今更変更はできないと、却下されたと愚痴っていた。ちなみに広場にはベルとガレスちゃんも来ていたりする。俺も誘われたのだが、まさか、アーサー様と一緒にいるとは言えなかった。
「それでこの前誘ってくれた貴婦人がね……」
「いや、お前人妻に手を出すのはマジでやめろって……」
「ご苦労様です。トリスタン、パロミデス」
「は、はい……」
俺とエレインさんが護衛のような形でアーサー様のお供をしていると、彼女が何やら雑談をしていた警備の騎士に声をかけた。話しかけられた二人の騎士は驚いた様子で返事をする。
「女性関係の火遊びもほどほどにしてくださいね、トリスタン」
「いやぁ……肝に銘じます」
アーサー様は気まずそうにしているトリスタンと呼ばれた騎士に微笑むと、そのまま先に進むのでついて行く。トリスタンはなにやら顔を青くしていて、バロミデスという騎士になぐさめられるように肩を叩かれている。
「先ほどの人は親しい騎士なんですか?」
「いえ、ちゃんと会話したのは初めてですよ」
「え?」
「アーサーはね、騎士を筆頭に城で働いている人間の顏と名前を全員覚えているんだよ。それこそ、コック見習いまでね。すごいだろう?」
なぜかエレインさんが得意気に答える。しかし、本当にすごいな、城で働いている人って何人くらいいるんだろうか。俺が尊敬のまなざしで見つめるとアーサー様は少し、微笑んでいった。
「名前を覚えるだけで今のように牽制にもなりますし、忠誠心もあがりますからね。合理的に行動をしているだけですよ。ここが控室です。時間まで特にやることもないのでここで最終的な打ち合わせをしましょう」
「でも、エレインさんはともかく俺がこんなところにいていいんでしょうか?」
「むしろいてもらわないと困りますよ。今回の作戦はあなたとエレインの協力が必要ですし、何よりも悲しい事に城内は誰が味方かわかりませんからね、一番信頼できるのがあなた達なんですよ」
そう言って彼女は部屋に俺達を招き入れる。さすがは貴族が使う部屋だからだろう。豪華な装飾のされた家具や美術品があり少し気遅れをしてしまう。多分これ一つで俺の一生分の稼ぐ金額とか超えるかもしれないんだよな……そう思うと迂闊に触れない。
「それではおかけください。お茶を……と言いたいのですが今は使用人も席を外させているのでお許しを」
「ならば、私が淹れようか? ちょっと行ってくるよ。なにかあったら呼んでくれ、飛んでくるよ」
「エレインさん?」
そういうとエレインさんはちょっと得意げに部屋を出て行ってしまった。いやいや、護衛をどうするんだよ……万が一襲撃されたらやばくない?
「ふふ、彼女も変わりましたね……昔よりも楽しそうに生きています。その点ではセインさんに感謝ですね。それにエレインなら私が悲鳴をあげればすぐに来てくれますし、間に合わなくてもセインさんがか弱い女性である私を守ってくれるのでしょう?」
空気の読めないエレインさんにどうしようと思っているとアーサー様がクスクスと笑って話しかけてくる。彼女が部下に対する態度とエレインさんに対する態度はまるで別人のようである。本当に友人なんだろうな。
「そういえば、アーサー様とエレインさんはどうやって知り合ったんですか?」
「いやぁ、実は彼女のスキルに目を付けて影武者になってもらおうと思ったんですが……あの性格ですからね……あきらめて普通にお茶をしていくうちに裏表のない性格に癒されて仲良くなりました」
「ああ……確かに演技とかはできなさそうですもんね……」
「でも、そんな彼女にだいぶ救われているんです。城にはああいう人はいませんから」
俺達は影武者をしようとして色々な失敗をするエレインさんを想像して、アーサー様と俺は笑い合う。ヴィヴィアンさんとの時の事を俺は思い出して、ため息をつく。周りのサポートがあっても難しいだろう。絶対余計な事を言いそうである。でも、そんなときに癒されるというのもわかる。
「ん? 二人とも何を楽しんでるんだ? 私も混ぜてくれないかい?」
きょとんとした顔をするエレインさん見て俺達は再度笑う。
「では話し合いをしましょうか? まずはセインさんの提案を受けようと思います。そのうえでいくつかあなたたちにお願いがあります」
そして、俺達は今後ついて話し合うのだった。
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