第46話 輝かしき王アーサー2

「申し訳ありません、アーサー様は継承の儀式の準備のため、お会いすることができません」



 エレインさんの案内で、アーサー様が泊っているという宿に来た俺達は護衛らしき人に足止めをされていた。城にいるかと思いきや、継承の儀式の場所の近くの高級宿に泊まっているらしい。

 護衛の人の俺をみる視線はまるで不審者を見るような目である。いや、まあ、服装も冒険者としては平均的なものだし、ガレスちゃんとのクエストからそのままきたせいで薄汚れているのもあって、ここには確かにふさわしくないといえばその通りだけどさ。



「それは私もかな。彼女から護衛を頼まれているんだが……」

「いえ、エレイン様は通すように言われています、ただ、お連れ様は入れる事ができません。エレイン様の知人とはいえ万が一という事もありますので……」



 護衛の人は俺には一切目を向けずにエレインさんにのみ話しかけている。扱いが違いすぎないか? 俺とエレインさんはどうしようとばかりに目をあわせる。こうなったらエレインさんに事情を説明してもらうか……などと考えながら俺が唸っていたが、かつて、仮面の人にもらった指輪の事を思い出す。



「これがあっても、ダメでしょうか?」

「それは……本物か? 失礼します」



 俺がおそるおそる護衛の人に指輪を見せると、彼は目を見開いて指輪に触れる。なにやら一生懸命みているが、やはり重要なものだったようだ。



「お名前をうかがってもよろしいでしょうか? また、失礼ではなければどこでこれを入手したかも教えていただけないでしょうか?」



 先ほどの訝し気な態度とは違い、こちらをしっかりと見つめている。態度の変わりように困惑しながらも俺は答える。



「はい、セインと言います。この指輪はエレインさんとアルトリウスさんと茶会をしている時に、アルトリウスさんから頂きました」

「なるほど……少々お待ちを……」




 まさか、ユニークスキルを売りましたというわけにはいかず誤魔化しながらそう言うと、護衛の人は慌てて宿に入っていった。あの指輪はやはり重要なものだったんだなと、俺が思っていると扉が開いて、慌てた様子の護衛の人が戻ってきた。




「失礼いたしました。エレイン様、セイン様、アーサー様がお会いになるそうです。おはいり下さい」



 俺は護衛の人が開けた扉から宿へと入るとそこはまるで貴族の屋敷の様だった。やたら高そうな彫刻や、シャンデリアなどがあり、場違い感が半端ないんだが……エレインさんはというと慣れた様子でそのまま進んでいく。さすがはSランク冒険者ということか……俺的にはやはり、ベルの宿屋の方が落ち着くなぁと思う。



「ここだよ、セイン君」

「入って大丈夫ですよ」



 エレインさんがそう言ってノックすると、男性にしては高いが女性にしては低めの中世的な声で返事が返ってきた。それを待って扉を開けるとそこには長い金色の髪を後ろで結んだ中世的な美青年が優雅な仕草で座っていた。以前あった時は変な仮面をしていたこともあり、ちゃんと顔を見るのも声を聞くのも初めてだ。




「部下が失礼をしたようですね、明日の継承の儀式があり気が立っているとはいえ、申し訳ありません。それでお話というのはなんでしょうか? 商談に来た……というわけではないようですね」




 俺は王になる人と話すという事に緊張しながらも部屋に入るのであった。


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