第44話 ガレスちゃんと幽霊屋敷8
「セインさーん、どこへ行くんですか?」
「ああ、こっちだ、ガレスちゃんも早くうぉぉぉぉっぉぉ!!?」
飛んでくる火の玉の照準がどんどん上達してる気がする。おそらく魔術を使うのに慣れてきたのだろう。俺は目の前を通り過ぎていく火の玉を見て背筋がぞっとする。
これは早く決着をつけなければいけないだろう。俺はようやく目的の部屋にたどり着いた。そして、扉をしめてそのままの勢いで、壁にかかっている絵画を引っぺがして、ガレスちゃんに渡す。
「セインさんこれって……でも効果があるんでしょうか?」
「あることを願うしかないだろうな」
『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!! ロザリーロザリーィィィィィ』
不気味な声と爆発音と共に、扉がふっとんできた。俺は絵画を抱えたガレスちゃんを庇うように、覆いかぶさって守る。ふっとんできた扉があたり左肩に激痛が走るが直撃ではないため致命的なダメージではない。
「ほら、ロザリーに会えるぞ」
「ここですよ!!」
『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!! ロザリー……』
絵画を見たデミリッチの動きが止まる。白骨化した目から一瞬だけど、憎しみの感情が消えて、悲しみに満ちた光が宿ったのは気のせいだったろうか? 絵画を見て何かを思い出したのかもしれない。そして、さきほどよりも激しい憎しみの感情をまき散らしながら叫ぶ。
『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』
「ガレスちゃん、いまだ!!」
「はい、セインさんを信じます」
そういうと彼女は俺に絵画を預けて、そのまま槍を掲げながらデミリッチの元へと駆け出していく。隙だらけのその姿に火の玉は飛んでこない。怨嗟の叫びをあげる彼は自分の影に俺のナイフが刺さっていることに気づくこともないだろう。そして、そのまま、ガレスちゃんの槍が貫く。
『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』
「くぅぅぅぅぅぅ!!」
ガレスちゃんの槍を受けた部分から黒い霧のようなものを溢れ出させながらも、デミリッチは不気味な声を上げ続ける。まるで、浄化されまいと抗っているかのように……まるでこの世への恨みを晴らすまでは終われないというばかりに……だけどそれも長くは続かなかった。徐々にその体が崩れていき骨でできたからだが塵となっていく。
骨でできたからだが完全に塵と化したため朽ちたかと思いきや、黒い霧が徐々に小さくなりつつもこちらへとやってくる。『影縛り』が外れて、自由になる。だけどその目にはもう、憎しみはなかった。体全体から黒い霧をまき散らしながら一歩一歩こちらに向かってきて、絵画の少女を撫でる。
『ああ、ロザリー……今行くよ……』
その一言を最後に塵は霧散して跡形もなくなった。俺とガレスちゃんは目の前の光景に何とも言えない気持ちになる。
「セインさん……私は……」
「レイスは元々この世に未練を残した人の魂が凶暴化したものだ。君は彼を救ったんだよ」
俺達の都合のいい解釈かもしれないけれど、あのデミリッチは最後に正気に戻れた気がする。きっとレイスのままこの世に居続けるよりもましだったはずだ。
「そうですね……私……自分のできることがみつかったかもしれません」
燃えていく屋敷のあちこちから煙が出てきた、このままでは俺達も巻き込まれてしまうだろう。急いで脱出をすることにする。俺とガレスちゃんはなんとなく、絵画を持っていくことにした。火事場泥棒みたいたけど、なんとなく放っておけなかったんだよな……
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