第30話 青い髪のエレイン5

「部外者なのに……私もいいの……?」

「ああ、構わないさ、私とセインのラブラブっぷりを見てもらわないとね、なあ、ダーリン」

「え、ああ、そうですね……ハニー」



 あの後、俺とエレインさんはヴィヴィアンさんと合流して、宿屋まで案内をすることになった。ベルは一足早めに帰り、ガレスちゃんへの口裏あわせをしてもらっている。

 そして、俺とエレインさんは手をつなぎながら、ヴィヴィアンさんと歩いているのだが……俺はアンジェリーナさんとデートをしている。俺はアンジェリーナさんとデートをしている!! 心の中でそう呟きながら歩いているので返事が雑になるのは許してほしい。ちなみに俺がつぶやいているアンジェリーナさんというのは、最近俺がはまっている英雄譚の推しキャラで、大人なお姉さんの冒険者ギルドの受付なのである。

 なんで、こんないかれた妄想みたいな事をしているかというと、エレインさんがどや顔でいった対策がこれなのだ。要は感情を誤魔化せばいいのだから、推しキャラとデートしていると妄想して感情をデートモードにしろという事である。まあ、実際の話エレインさんのような美女と手をつないでいるだけで心臓はバクバクなのだが、それを言ったらなんか負けた気がするし……



「ダーリンとか……ハニーとか……呼ぶ人達はじめてみた……」

「え?」



 ヴィヴィアンさんの言葉にエレインさんが小さく悲鳴を上げてこちらを助けを求めるように見つめてくる。ですよねー、俺もやっぱりおかしいと思ったんだよ。でも、エレインさんの地方ではそう呼ぶ文化でもあるのかなって思ったんだよ。くっそ、確認しておけばよかった。



「俺達は誰よりもラブラブですからね、特別な呼び方をしたかったんですよ。なぁ、ハニー」

「フフ、なんかそんな事言われると照れるじゃないか」

「なるほど……」



 この人なんでマジで照れているんだよ。くっそ可愛いな、おい。「えへへ」といいながら笑っているエレインさんを見て思う。



「じゃあ、それぞれの好きな所を……教えてくれるかな……」

「「え?」」

「どうしたの……ラブラブのカップルなら……答えられるよね?」



 驚く俺達にヴィヴィアンさんが、無表情に尋ねる。その顔からは俺達を疑っているのか、からかっているのかうかがい知れない。でも、嘘ってばれたらエレインさんがいなくなってしまうかもしれないんだよな。俺は彼女を安心させるように手を握りしめると、驚いた顔をしているエレインさんに任せてくれとほほ笑んだ。



「エレインさん……いえ、エレインは正直戦う以外の事の以外はからきしです。この前も、皿を割ってましたし本当に年上なのかなとか、この人冒険者以外で生きていけるのかなって不安にもなります」

「うう……セイン君がいじめる……」

「でも、すごい一生懸命何ですよ、何回失敗しても、何回失敗しても、ベルたちに聞いて頑張るその姿はすごいカッコいいと思います。それに……俺が店を開くか悩んでいる時には声をかけてくれてアドバイスをしてくれたり、俺が元パーティーメンバーと揉めた時はその力で助けてくれてすごい頼りがいがあって俺はそんなエレインさんが好きです。それと……何よりも自分の夢のために築き上げたものを捨ててでも頑張ろうって言う姿に憧れました」

「なっ、照れるじゃないか。そっか、君は私をそんな風に思っていたんだね。」

「ふーん……なるほど……」



 俺の言葉に普段のクールそうな顔はどこにいったらやら嬉しそうにデレデレした表情でエレインさんが言った。ああ、くそ、なんかムチャクチャ恥ずかしいんだが。



「フフ、セイン君は私の大人の魅力にメロメロだったんだね。可愛い奴め」

「じゃあ、次はエレインの番だね」

「え? いや、ちょっと用事が……」



 俺は逃げようとするエレインさんの手を握りしめて逃亡を阻止する。俺だけ恥ずかしい思いをさせてたまるかよ。



「楽しみだな、エレインは俺の事をどう思ってくれているんだろう?」

「私も……エレインはどんな男が趣味だったか……気になる」

「うう……わかったよ、言えばいいんだね……私は……セイン君と知り合ったのは、私の悩みをスキルで救ってくれたのも感謝しているけど、それよりも私の夢を笑わないでくれたのが嬉しかったんだ。誰かに夢を肯定されて私は元気をもらえたんだよ。それがきっかけで気になって、セイン君が私がミスをしたときにフォローをしてくれたり、他人のためにスキルを使ったりしているのをみていいなって思ったんだ」

「なんというか……言われる方も言う方もムチャクチャ恥ずかしいですね……」

「だから、言いたくなかったんだよ!!」



 思った以上に真剣な事を言われて俺は羞恥で顔が熱くなるのを実感した。エレインさんも顔が真っ赤なのでおあいこだろう。というかこのひとそんな風に俺の事を思ってくれていたんだなって思うと嬉しさと、こそばゆさが混ぜあわさってなんとも言えなくなる。やっべえ、顔をまっすぐ見れないんだが……だけど、彼女との繋がりたしかにあるとつないだ手から伝わる体温が教えてくれる。



「ほら、ついたよ、ヴィヴィアン姉さん。ここが私たちの宿だよ」

「なるほど……ここが二人の愛の巣……昨晩もお楽しみでしたか?」

「「楽しんでない!!」」

「ごめん……一回いってみたかった……」



 俺達は口をあわせて否定するのだった。無表情だけど、どことなくヴィヴィアンさんが楽しそうなのはきのせいだろうか?


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