第12話 白い手のガレスちゃん5

「技能取引者<スキルトレーダー>……ユニークスキルには色々種類があるんですね……」

「ああ、俺も正直どれくらいあるか謎だよ。だからこそ、俺のスキルが活きる……はずなんだよな。金さえあれば……」



 俺がスキルを説明すると彼女は感心したように言った。その反応に苦笑しながらも俺は答える。本当にたくさんの種類のユニークスキルがあるものだ。多分、ユニークスキルを買いまくれば最強になれるんじゃないかと思ったが、俺は修復を使った時の事を思い出してくだらない妄想をやめる。結局持っているのと使いこなすのはまた別の話なのだから……



「じゃあ、ガレスちゃんのスキルをみせてもらうな」

「はい、お願いします」



 俺はガレスちゃんの手を握る。ああ、女の子の手って柔らかいなぁって思っていると視線を感じたので振り向くとエレインが不機嫌そうに唇を尖らせていた。



「私の時とずいぶん反応が違くないかい?」

「いや、あの時は緊張してましたし……あとエレインさんの手は硬かったんで……」

「ふん!! そりゃあ剣を振ってれば硬くもなるさ、女の子らしくない手で悪かったね」

「そんな……エレインさんはスタイルも良くてとっても女性らしいですよ」



 不機嫌そうにそっぽを向いたエレインさんにガレスちゃんがフォローの声をかける。やっべえ怒ってるぅぅぅぅ!! あとで謝ろうと思いながら、『スキルトレーダー』と『目利き』を発動させる。するとガレスちゃんの所持スキルが俺の脳内にうつる。


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清浄なる白い手

 美しく白い手で触れたものを浄化するスキル。その効果は持っている獲物にも適応されるユニークスキル


掃除スキル

 綺麗に掃除をできるスキル。ホウキなどの清掃用品を使用した際に効果が上がるコモンスキル。



スタミナ増加

 体力の限界値が上がるコモンスキル




骨削ぎ

 骨にこびりついたものを綺麗に削ぐスキル。料理の時など骨にこびりついたものを取りやすくなる


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 俺はまずは彼女の保持スキルを見て、彼女の得意分野を探る事にしたのだ。最後は戦闘用かと思いきや料理用スキルだったのか……ちなみに本来スキルトレーダーだけではここまで細かいスキルの説明はわからない。目利きという商品の価値を見極めるスキルを併用することによって、レアなスキル『鑑定』と同等の効果を期待できるのだ。。ちなみに目利きは子供の頃に父の商売についていった時に覚えたスキルで俺が元々持っているコモンスキルである。



「どうでしょうか? セインさん」

「うーん」



 何と答えるべきか……スキルの割合からして彼女は戦闘より家事などの方に才能があるのだろう。だけど、彼女は冒険者を目指すと言っている。自分が冒険者に向いていないとわかりながらもその道を選んだのだ。それならば冒険者用のアドバイスをすべきだろう。



「戦闘用スキルが一切ないな……だから魔術師や法術師はやめた方がいいと思う。その代わりスタミナ増加があるから前衛の方がいいと思うぞ」

「そうですか……やっぱりセインさんも私は冒険者に向いていないと思いますか……」

「確かに魔術師の様に魔術を使ったり、法術師の様に神の力を使うようなタイプだと、必要なスキル数が多くなるはずだし、ガレスちゃんには向いていないと思うよ。だけど、今、得意なものがないって言う事は逆に何でも選べるってことだよ。一通り訓練はしたんだろう? だったらどの武器が一番しっくりきたんだい?」



 悲しそうな表情でうつむくガレスちゃんを元気づけるかのようにエレインさんが明るい声をかける。冒険者になる事を否定されると思ったのか、ガレスちゃんは恐る恐るだが口を開く。



「そうですね、一通り武器は扱いましたが槍が一番しっくりきましたね。とはいってもスキルは手に入れられなかったんですが……」

「なら、槍にすればいいさ、セイン君初級槍術のスキルは売っているかな?」

「ええ、ありますよ。怪我をして引退した冒険者から買ったばかりの新商品です。金額は銀貨三枚だけど、どうする?」

「確かに欲しいんですけど、お金でスキルを買ってもいいんでしょうか? みんなは頑張ってスキルを手に入れているのに……」



 ガレスちゃんの言葉に俺はハッとする。確かにそういう風な考え方もあるのか……モードレットたちは当たり前のように買ったり借りたりしてやがったからな……確かにスキルを買うという行為はなれていないから、抵抗があるのかもしれない。でもさ、俺は気にしなくていいと思うんだよな。



「それは違うぜ、ガレスちゃん。例えばこの料理はマスターが一生懸命料理を学んで美味しく作れるようになったものだ。それを俺達は金で買って食べている。それはずるいことじゃないだろ? それにスキルだって買って終わりじゃないよ。買った後にキチンと理解しないと物にはならないぞ」

「そうそう、昨日のセイン君みたいに歪んだお皿が出来てしまうからね」

「そうですね、まあスキル無くても普通の人はあんなにポンポン皿を割ったりはしないですが……」

「あ!! それを言うのはなしだろ!! わたしだって一生懸命頑張ってるんだぞ」



 俺の言葉にエレインさんは口を尖らして抗議をする。思った以上に気にしていたみたいだ。俺達が口論をしているとガレスちゃんが楽しそうに笑った。



「ふふ、あの後ベルさんムチャクチャ怒ってましたもんね。『割るのもだめだけど誤魔化すのはもっとだめに決まってるでしょー!!』って』ありがとうございます。二人のおかげで勇気が出ました。そうですよね……買ったスキルでもちゃんと使いこなせばいいんですよね。それでは、売っていただいでもいいでしょうか?」

「ああ、もちろん、スキルオープン」


 その言葉と共に脳内にスキルの取引画面が発生する。そして、俺は彼女にスキルを売った。これで彼女は冒険者としての道を一歩進むことになるだろう。俺のこの判断が本当に正しいかはまだわからない。でも、スキルを取引することでその人のやりたいことを進める手助けはできるのだ。俺は幸せそうに笑っているエレインさんとガレスちゃんを見ながら思う。なら……こういうのも悪くないんじゃないかと思うのであった。そして俺は一つの決断をするのだった。自分の将来に関する決断を。


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