便所蟋蟀
ルルルルルルル
第1話
行き詰まる、腹底に居る、黒い虫。
ギィギィと鳴く、便所蟋蟀。
何処の分岐を間違えた?
何処の選択を間違えた?
虫の眼に、無数に映る朧顔
無様に崩れ、塵と化す。
どの悪魔に魂を売った?
とうに品格は朽ちたのか?
下り坂、先の見えぬ、一本道
戻り橋すら、霧の中
いやに冷たいじゃないか
いやに震えているじゃないか
もう随分と昔、学生と呼ばれていた時代ですら、私は既に終わったと考えていた。
こびりついた底辺の肉皮。
こびりついた弱者の媚笑
両手にした宝石のついた指輪が光る。まだ輪郭を保ち、輝く。しかしリングは違う。欠陥のそれは錆つき、功績を支える鉤爪は見る影無し。
どれ程の宝石が足元に転がっている?背に伸びる輝く道。手に溢れる虚無。これが意味する事は?
すべて終われば良い
すべて終われば良い
あの日見た夢が、人生のすべてだったんだ。
私は自ら選び、破滅へと歩んだ。
あぁ!つまり期待通りじゃないか。
死への旅路と同じように凱旋しよう。
観客はいない。
見送る人間もいない。
優しい風が吹く。
優しい太陽が輝く。
私は歩んでいる。
便所蟋蟀 ルルルルルルル @Ichiichiichi
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