第29話 そう簡単に神様は休みをくれないようです
サーシャをヤンの家に置いてきて、帰路に就いていた俺の携帯から着信音が鳴った。何故か、とても嫌な予感がする…携帯の着信音の音から、誰が連絡してきたのかは分かる。問題はその理由だ。休日の土曜日に連絡する必要性のあるものとは一体何だろう?疑問を浮かべながら、携帯の画面を見ると―――
『今淵君って街にいる?もしかしてだけど、パーカーとジーパンを着てない?』
怖い怖い。これがもし偶然ではなかったら、ストーカー行為で通報していたところだよ。今回は知っているというか、偶然出くわしたのは分かるけど…
って言うか、服が詳細に見える位置ってかなり近いだろ。
居場所を特定するために、頭を左右に振って探していたら、
「あ~やっぱり淵君だった」
声はうしろから聞こえるため、振り向こうとすると彼女の指に当たった。
「いえ~い、淵君引っかかった~」
定番の振り向いたときに、指がほっぺをぷにっと当たるという幼稚な悪戯だ。
その悪戯の張本人は、小柄で金髪赤眼の美少女、マティルドだった。
フランスでは私服で登校するが、スカートなど露出度が高い服は禁止されている。
夏になると女子が、短パン着れる男子羨ましいって言っていることが多々あった。
昨日と変わって、マティルドはスカートを着ている。スカートは足首まで長く、縦線がいっぱいあって、なんか上品な感じが出ている。上は、黒のTシャツで白色のスカートと似合っている。本人には言わないけどね、また『惚れた』と言われていじられるだろう。
思わず見惚れてしまってしまったが、何故休日の土曜日に接触してきたんだ?
「こんにちは、マティルドさん。昨日ぶりですね」
「む~敬語……そうね昨日ぶりね。再開は意外と早かったわね、学校で再開すると思っていたけど、こっちとしては好都合だわ」
俺が未だに敬語をマティルドに使っているのが気に食わないのか、ほっぺを可愛く膨らませた。普通に可愛いんだが、今朝に美少女一人、昼も美少女相手は…ちょっと俺のキャパが爆発しそう……
最後に放たれた言葉が不穏なんだけど…俺の第六感が、すぐに逃げろと訴えてくる…
警告されなくても、挨拶が終わったらすぐに家に帰—―――――
「ところで淵君今暇でしょ?」
「えぇ、まぁ暇ですn……いえ、急用があったのを今思い出して、すぐに帰らなくては……」
「この距離だと、私の運動神経なら難なくタッチできるわよ?」
な…なんて恐ろしい子!弱点をこんなところで利用されるとは…
従うことは確定なのだが(逆らってはいけない時はすぐに諦める)、何をされるか。
いや、愚問だな。俺達はこの街の中心部、しかもショッピングモールの横にいる。
答えはもう一つしかない。
「ショッピングに付き合ってもらうわ。今日は一人だから、知り合いがいて助かったわ。いいわよね?」
ですよねー。俺はどちらかと言うと、女性に絶対服従とまでは行かないが、大抵のことは断れない。だから、自分でも分かる。兆が一もありえないが、俺に彼女が出来た場合絶対に尻に敷かれる自信がある。逆に、どうやって断るか分からん。イケメン幼馴染に聞こうとしたら、一瞬で空気がー10度になったから止めたし…
最後のはもう脅しだし…
「……付き合いますよ」
「やったー!じゃあデパートに入るわよ」
「…はい」
そのまま、俺達はデパート中に入って服屋さんの所へ行った。
服の方に行くのは知ってた。逆に俺みたいに、服を親に買ってもらっている奴はあまりいないだろう。
店内に入ると、綺麗な服がいっぱい並んでいて、靴やアクセサリーもいっぱいあった。でもね、俺思うんよ。こういうところは女子だけか、彼氏と行って欲しい。
耐性がない俺を巻き込まないで。絶対に場違い……いや、実際はマティルドの彼氏として見られているかもしれないが、それはそれで嫌だ。
美少女と一緒で嫌というのは失礼だけど、逆に俺なんかが一緒にいて大丈夫?って思てしまう。
後、誰か教えて欲しいんだけど。なんで女性の服屋って刺激的というか、エロティックな服がぽんぽん置いてあるの?思わず目が燃えそうになった。
だから、俺は今目を閉じてマティルドが買い物を終わるまで座って待っている。
髪が長いおかげで、誰も目を瞑っていると思わないだろうし。
「淵君ちょっと来て~」
眼を開けて、声がする所目掛けて歩く。マティルドがいたのは試着室の前だ。
そして、腕に持っているのはまだ買っていない服だ。あ~、こうなる可能性もあるって知っていた。でも現実逃避して、その可能性を消していた。
そして、忘れていた。女の子はいくつになっても、美の探究者だと…
そりゃ、新しい服があったら試したくなるよね!俺もそうだよ!
でも、俺女子の服装の感想なんて大したこと言えないよ!
マティルドが試着室に入って、待つこと5分。
俺その間、褒めるための言葉を考えていた。そして、試着室のカーテンが開いた。
出てきたのは、ネイビージャケットとベージュスカートを着たマティルドだった。何度も言うが、彼女の事は恋愛面では好きではない。だが、綺麗と思ったものを素直に言ってはいけないルールはない。彼氏さんがいたら、似合ってるしか言わないけどね。
「どう?似合ってる?」
出てきた、究極の質問が。多分この問いは、多くの男子を苦しめただろう。では、恋愛経験皆無の俺がどう乗り越えらると?無理だ。だから、率直に思ったことを言葉にする、それだけだ。
「似合っているよ、いつもの服装は可愛い感じを演出していたけれども、今回は黒のネイビージャケットを着ているから大人っぽく見えて、マティルドの魅力を十二分に引き立てているよ。しかもトップスとアンダーは大人っぽく仕上がっているのに、あえてスニーカーを履くことで、ハズしを効かせているから―――――」
「ストップ、ストップ、スト――――――――プ!!分かった、分かったから!これ以上言われたら、頭がパンクしちゃう!!……この服買うわ」
なんか、止められちゃったから多分お気に召さなかったのだろう……ちょっとショック…でも服は気に入ったらしいから、お会計に行っているね。それにしても、マティルドの服装を誉めたら、周りの女性客がマティルドに羨望の視線を送っているのは何故だろう?
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