第28話 ゲーム没収
ヤンの家は少し特殊な所だ。家と言うか、敷地の作りが特殊だ。
ヤンの家族構成は、父、母、祖母だ。後、猫が二匹。
ヤンの敷地に入ると、田舎みたいに整えられたリンゴの木が砂利道の周りに植えられている。そこを真っ直ぐ突っ切ると、家が二つ見えてくる。
一つは、父型の祖母の家。彼の祖父が他界しているため、同じところに住んでいると言っていた。もう一つは、他の家族三人が住んでいる家だ。
祖母の方の家は、木で出来ていて、THEお婆ちゃんの家感が漂う家だ。
もう一方は、細長い芋虫みたいな家だ。失礼だがとても人が生活できるような家ではない。この中に三人が住んでいると言われた時は信じられなかった。
そこは、とりあえず置いといて。
ヤンの家に着いたため、さっき言えなかったことをサーシャに伝える。
「サーシャ、さっきお前が変なとこ押したため、最後まで説明できなかったが…これは、睡眠薬だ」
「睡眠薬って…それで、眠らせろと?」
「あぁ、ゲームで時間稼ぎをして夜ご飯を食べた後、ヤンが飲む飲み物の中に入れて、強制的に眠らせろ」
「滅茶苦茶だな……どう言い逃れするんだよ?」
勿論、普段のヤンなら不思議に思うだろうが、今回はビデオゲームをやるのではない。
知っての通り、画面からはブルーライトという、人間の目を覚醒する作用を持つ光が発せられている。それはスマホやパソコン等、現代で必要不可欠な物に多く搭載されている。
だが、今回はブルーライトを発せないボードゲームやカードゲームだ。これなら、たとえ寝落ちしたとしても怪しまれないだろう。
それに、目的は二日間ヤンを熟睡させることだ。その後にバレて、怒られても何ともない。
「画面以外のゲームに慣れていなくて、寝落ちしたとでも言えばいい。それに、睡眠薬は遅効性だからバレる筈がない。サーシャは、ヤンに二回、この薬を飲ませればいい。今回は粉末の睡眠薬だから、飲み物とかに混ぜておけば成功するだろう」
「…分かった。最後に、ゲーム機はどうやって持っていくんだ?そのバッグなら不可能だろう、場所が少なすぎる」
俺はゲームを没収すると言ったのだ。盗むとは言っていない。没収という二文字が出てきたとき、連想するのは親ではないか?なら、最近ヤンのゲームへ依存を心配しているお婆ちゃんに、二日間預けて貰う。その後に、返してもらおう。
「そこは問題ない。問題は、サーシャがどうやってヤンからゲームを奪うかだ」
「マジでそれな…あいつなら、暴力を振るってでも取り返しに来ようとするぞ絶対」
「第一被害者の俺が対策を練っていない訳ないだろ。安心しろ、この手紙を渡せば納得してくれる筈だ(俺に加担したため、サーシャに八つ当たりするかもしれんが)」
「おい、今なんか嫌な予感がしたぞ。なんか隠してねーか?」
「気のせいだ。それより、扉の前で待っているから後は頼んだぞ」
「……いいさ、じゃあ健闘を祈ってくれ」
「あぁ、肉塊の状態で出てくるなよ」
「こえーよ」
サーシャは、芋虫状の家に入った。ヤンの父は、昼はカフェ、夜はバーテンダーの仕事を営んでいるため家にはいない。この街では結構有名なところだ。ヤンの母親は、中国へシェフとして修業しに行っている。そして、祖母の方は家でのんびりしているはずだ。
ドカン!!ガシャン!!パリン!!!
始まったが、最後に窓ガラスが割れた音が聞こえたのは幻聴だと願いたい…
現実逃避していたら扉が開いて、サーシャが出てきた。
満身創痍で。
「無事でよかったよサーシャ」
「無事という言葉を辞書で調べて来い。ほらよ、ご所望のもんだ」
渡されたのは、大量のゲーム機。P〇5、〇BOX S、S〇ITCH、W〇I、etc…
古いゲームボイなんかもあるし、もうコレクターの域に達している。
積み上げたらギリギリ、両手で持っていけるようになって、ヤンのお婆ちゃんの家に持っていく。
サーシャは再び戦地に引き戻されたが、多分俺からの手紙を読んだため、おとなしくなったのだろう。今はさっきみたいな音はもう聞こえない。
「ごめんくださーい。今朝連絡した淵でーす。お婆ちゃん、いますかー?」
一応、歳で聞こえない可能性があるためちょっと音量を上げる。
あっ、扉が開いた。
「はいはい。あらっ、淵ちゃんおっきくなったわね~。前はあんなに小さかったのに」
出てきたのは、身長150cmの小柄な老婆。家が農作物で囲まれているせいなのか、彼女の服装のせいなのか、まるで現役農家が出てきたみたいだ。
「あはは、成長期ですから。それよりも、これどこに置きますか?」
「あ~、家の中にある金庫に入れて頂戴」
「わかりました」
家に入ったら、アップルティーの香りがしたから、多分お茶でもしていたんだろう。
そのまま、真っすぐ言ったら頑丈そうな金庫があった。何故こんなところに金庫がと思うだろうが、これはもう小さいころに聞いた。
10年ぐらい前に、ヤンの父が自分の店内による襲われてお金を盗まれたため、対策を練った結果これだった。…正直に言うとあまり意味があるのか分からないけど、今回は役に立ってもらう。
「ここだよ」
「ありがとうございます。入れさせてもらいます」
手早くヤンのゲーム機を金庫の中に入れ、俺は帰路に就く。お婆ちゃんにお茶でも提案されたが、その間にヤンに見つかってしまったら気まずいため、今回はやめておいた。
帰って少し休みたいし……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます