第24話 どうしてこうなった……

 俺は今とても困っている。何故?簡単に言うと注目を集めているから。

 別にこの姿で多少人目に付くのは構わない。むしろ、それに耐えるための鎧のようなものだ。

 だが人間には、キャパシティがある。そう、物事を受け入れる要領だ。

 特別容量が悪い人間ではないのだが、ある物事において、キャパオーバーになることがある。それは、女子という存在と注目されるということだ。

 そして今、俺の隣には今朝見た銀髪の超絶美少女、付け加えて周りからは何故か足を止めてこちらの方を見てくる人達…


「どうしてこうなった……」


 隣にいる子に気付かれないように呟く。


 数時間前


 街中へ歩いていた途中、映画館を発見して予定を変更した。よく来るわけではないし、映画が好きと言われたら微妙だが。今回はあの鬼〇の刃の無〇列〇編が、ようやくフランスで観られるようになったので、映画鑑賞に行くことにした。

 勿論フランスで上映されているから、フランス語バージョンもあるけど、日本語を理解できるのに、わざわざ翻訳版を観に行く意味はない。映画を一人で観に行くのは虚しいと思うやつに言うけど、別に映画は一人で観に行ってもいいんだぞ。そもそも、俺はぼっちではないし……やめよう、この発言こそが逆に虚しい…

 映画館の中に入り、チケットを買う。後10分で上映とはラッキー。後で昼飯を食べることは決まっているため、ポップコーンは断念してジュースだけ頼んできた。

 そのまま、上映している第一スクリーンの所へ行く。

 席に着いた瞬間、映画が始まった――――――――――


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 簡単に言うと、め~~~~~~ちゃくちゃ良かった……

 原作を読んでいたから、それをどうやって映像化するのかずっと気になってたけど、神がかってた。声優方もスッタフさん達もヤバかった。もう語彙力がなくて申し訳ないんだけど、彼等の頑張りと熱意が映画に現れていたよ。

 思わず最後に感嘆の声を上げてしまった…

 また興奮が少し残りながら映画館を出た。こういう心動かされる物を見たら、『何かをしなくては』と思うのはなんでだろうね。

 腕時計を見て、まだ10時半だったため街で散歩するために移動。映画館は町のちょっと横だったため、5分もかからなかった。

 目標の街に到着。前回マティルドと行ったカフェは、この街の中心部から離れていて端に位置する場所だった。今回は一番賑わっている中心部を回るつもりだ。


「相変わらず人が多いな」


 かなり発展している街であるため、人の数が多い。本来なら行かないが、今の俺なら問題ない。というわけで街中をぶらぶら――――ん?

 いざ街で時間を潰そうとしたとき、目の前にありえないとまでは行かないが、もう会うはずがないという存在と出会った。


「なんで見つけてしまうかね…」


 今朝会った銀髪美少女が目の前にいた。

 あれは絶対に助けを求めている動きだ。

 顔は遠いから見えないけど動きだけで困っていることが分かった。


「は~」


 流石に困っている人を見過ごすことはできないか。……あー女子と話すの苦手な俺に、何という試練を与えてくるんだー神様は。あれか、新手の嫌がらせか?

 いや、普通に考えたら美少女を助けることはむしろいいことなんだけど……

 …とりあえず事情を聴いてみるか。彼女がいるところまで一直線で歩く。


「あのー何かお困りで?」

「……」


 振り向いた美少女は思っていた通りに美少女だった。前回は髪の色しか分からなかったけど、今見ると余計美少女と思えてしまう。

 雪のような銀髪はストレートでおろしていて、彫刻のように端正な顔、肌は雪のように白いが不健康なほどではない、そして眼は碧眼。

 背丈は多分160から165cmかな?

 あまり服には詳しくないけど、確かニットと……テーパードパンツだっけ?

 白のニットとベージュ色のテーパードパンツが彼女にゆるふわ感と言うのだろうか?を演じている。それと同時に無表情な顔が合わさって、神秘的もしくはアンニュイな雰囲気を曝け出している。

 率直に言うと綺麗でミステリアスな人。そしてもう一つ、とても失礼だと思うのだけれど頭に過ってしまった。『どこのアニメから出てきたの人なのかな?』と。

 あまりにも現実性が無さ過ぎて、一瞬変なこと言いそうになったよ。

 多分この子の現実離れした美形を見たら似たようなことを思うだろう。

 ……多分…俺だけそう思うの?


「…どうかしました?」


 おっと、変なことを考えるあまり心配されたようだ。初対面なのに申し訳ない。

 これじゃあ、どっちが助けに来たかわからないや。


「いえ、なにも。それより、見るからに年が近いので敬語は結構ですよ。私のはお気になさらず、癖なので」

「そう…じゃあ助けてもらってもいい?迷子なの」


 15歳で迷子なんてありえないとは言わない。

 何故なら、俺もちょくちょく迷子になることがあるから。

 それは置いといて。迷子なら簡単だな、俺が分からなかったら携帯のナビがあるし。


「わかりました。行きたい場所の名前を教えてもらっても?」

「ヴァシエンヌ高校ってどこか分かる?」


 これならナビを見なくても済むな。良かった知ってた場所で。女子の前でナビを使いながら案内するのはカッコ悪いからね。


「分かりますよ、ではそこまで……今日本語で話しかけていますか?」

「間違いなく日本語だけど…そういえば貴方も日本語を使っているわね。驚いたわ」


 それが驚いた表情なわけあるか!今は黒曜淵として街に来ていないからツッコまないけど、思わず声に出しそうになったよ。って言うかこっちの方が驚いた、フランスしかも世界にどれほどいるであろう銀髪の少女が日本語を使えるとは。

 顔に出さないタイプか…


「驚いたって顔ではないんだけど…ンンッ行きましょうか、私も予定があるので」

「ありがとう、助かるわ」


 無表情だから何を考えてるかわからない!!

 なんで休日に銀髪美少女を自分の高校に案内してるんだろう?

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