第10話 ジェントルメイデンの秘密(0)

 ――――君はどんな答えをくれるのかな?


「……家でいるときの私の態度と学校にいるときの私の態度の両方が必要と言っているけど…理由は教えてくれの?」

「…確かにリスクの伴う情報を聞き出そうとしているのに、理由を教えられないのは不公平だね――――だけど、俺がどうやって使うかは企業秘密だ」


 俺がを受けるときに最も相手が戸惑うのが、この時だ。今までの数十人の人たちは、全員俺と事前に知り合っていた。だが、今回は違う。言うならば、初めてゼロから聞き出そうとしている。彼女とはさっき知り合ったばっかり、表面上仲良く見えても、内面まだ信頼しあえる仲までは発展していない。実際俺が100%信頼する人なんてほとんどいない、そして俺はマティルドを信頼していない。でも、もしも、この場で教えられる勇気を持っているのなら――――


「…そう…秘密ね。じゃあ私は何の根拠を持って淵君に教えなくてはならないの?」

「―――――会って一時間の野郎と作れる信頼関係」

「…………」


 そう、目の前の彼女はあって間もない男子に、自分から丸裸になれと言われているんだ。俺もマティルドの立場だったら驚きを通り越して失神するかもね…他人に恋愛相談する勇気すら湧かないけど…


「……信じてもいいのね?」


 マティルドが俺の目を見ながら聞いてくる。彼女の紅蓮のように赤く、強い芯があると証明する目、そんな目で見られたら期待を裏切りたくないね。普段の俺ならすぐに目を逸らしていたであろう、でも今回は吸い込まれた。マティルドという小さな女の子の決意に魅了された。だから――――


「信じてほしい…君の幸せを願うものとして」


 ――――俺も相応の覚悟で言うよ。苦手でも、君の目をまっすぐ見て、今言える俺の心からの言葉を君に捧げよう。これでもし否定されたら恥ずか死にそう…


「ぷっ。あはは。今のセリフ、まるで私に恋している男の子が応援するようなセリフだよ」


 マティルドが笑ったことで、今あった重苦しい空気が霧散したよ。正直に言うと、俺も心臓がバクバク鳴っていて死ぬかと思っていたよ…


「残念ながら俺は君に恋している男子じゃないよ。でも応援していることは事実だよ」

「あなたが私を好きじゃないことぐらいわかっているわよ。所で……応援だけで終わらせないわよね、?」

「……ということは、俺は君の信頼に値するってことかな?」

「とりあえず今までの立ち居振る舞いから信頼に値することは十分理解できたわ、だから賭けに出たってとこよ」


 賭けね……いつから恋愛相談からギャンブルという心理戦にジャンルチェンジしたんだろう?まぁ、本人が納得しているならいいけどね。じゃあその誠意にもこたえるべく俺からも一つ情報を与えよう。


「信頼してくれるのはありがたいけど、そのままじゃ俺としてはフェアじゃないと思うから、その代わりに俺がもしマティルドの情報を漏らしたときに、その情報を塗りつぶす位俺に関しての情報を預けようと思う」

「つまり情報交換ってこと?」

「そうなるね。君の個人情報と俺の個人情報の交換だね。ある種の予防だよ、万が一どちらかの一人が害悪をもたらした場合情報という人質を使えばいいということさ」


 そうならないように頑張るけどさ、人間であるから失敗と愚行はつきものなんだよ。それにマティルドを安心させるためには、これが一番手っ取り早い。


「……なるほど…いいと思うわ、でもその最初っからその考えが頭の中にあったということはさっきは私を試したわね?」

「ゼロに等しい信頼関係でどこまでいけるか知りたかっただけだよ、ごめんね」


 後で文句言われたりする可能性があるから、一応謝罪しておく。……だから可愛らしく頬っぺたを膨らませて拗ねないでほしい……


「いいわよ謝罪なんて、別に」

「そっか、ありがとう。じゃあ基本からいってくれ。他に必要な情報がた場合はこっちから聞くから」

「わかったわ」

「それじゃ始める前にまず、俺の人質情報をマティルドに教えるね。ついでに言っておくけど、他人にばらしたら俺の人生が狂っちゃうレベルだからね」

「そんなこと教えるの……なんだか怖くなってきたわ」

「一回しか言わないから、ちゃんと聞いてね。俺の秘密は――――――――――」


 さて、俺の人質情報を聞いた今回の相談相手はどんな顔をするのだろうか?言った瞬間、一瞬で彼女の顔は。別にっ悪い顔とかそういうのではなくて、俺を見ながら悲しそうな顔をした。あぁ……やっぱり君もと同じような表情をするんだね……

 っと、しんみりした話をするために打ち明けたわけじゃない。脱線はダメ絶対。


「それじゃあ、俺の秘密を打ち明けたから早速始めようか」

「待って淵君今言ったことは――――!!」

ことだし、教えたのは話を進めるためであって脱線するためではないよ?」

「っ!!でも!!」

「これ以上言うなら、この話はなかったことにするよ。そもそも、君にはそれほど余裕があるわけではないでしょう?」


 ごめんね……こんな嫌な態度をとって。俺が教えた割には詳細なしだもんね……でも教えるわけにはいかないんだ……だから…お願いだからもう食い下がらないで……


「……わかったわ」

「ご理解くれてありがとうマティルド」

「理解はしたけど納得はしていないからね……」

「それで十分」


 それじゃあ、ちょっと頭のスイッチを切り替えるか。こういう時こそ、ちゃんと脳を働かせないと意味がない。ん?脳を働かせなくてはいけないのは授業中だ?はっはっは、まだ高校生なのに幻聴が聞こえてきたよ。


「今回の依頼主マティルド・ルーフス本人から、個人情報開示の許可をいただきました。よろしくお願いします」

「集中すると敬語になるのね……こちらこそよろしくね」

「ではまずは――――


 そして俺は、彼女の仮面を一枚一枚剥がしていった……


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