ミラクルサプリ
リノベ和香
第1話 いつもの朝
「ただいま・・・」
早朝のパートから戻ってきた陶子は、返事のない閑散としたリビングでつぶやく。
上着を脱ぎながら、流し台の洗い物を確認すると、今日も娘の食器が洗わずに置かれていた・・・。
「せめて茶碗に水ぐらい、張っておいてほしいなあ・・。」
愚痴めいた独り言を言いながら、反射的にスポンジを持って洗い物をする自分にあきれる。 朝から、学校に行くまでの時間の気まずさを回避するため、半ば強引に働き出したくせに・・・。
娘、芽衣とは会話しなくなってどれくらいだろう・・・。 2年前、事故で夫を亡くして以来、私と芽衣の間には確実に距離ができた。 最初は、お互い悲しみを分かち合っていたのに、やらなければいけない日々の雑用の多さ、親としての使命感、年齢的にも変化が見えだしたときで、とにかく私はいっぱいいっぱいだった。
「お願いだから、ほっといて。」
疲れに任せて飛び出した言葉は、娘を殻に閉じ込めてしまう切符を与えてしまったのだ。次の日、ごめんねと謝ったが返事は無く、閉められた部屋のドアの音とともに
私の携帯にlineの着信音が響いた。
”これからは、お互いにこっちのほうがいいっしょ(笑)”
とふざけたスタンプと一緒に送られて以来、まともに会話すらしていないまま、半年が過ぎている・・・。
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