第21話 宴だ!
「みんな!ご苦労であった!感謝の気持ちとして、私からこの宴を送りたい。存分に飲み、食べ、歌うがいい!」
ダンジョン破壊を祝う宴が、ギルドマスターの一声で始まりを告げた。
カランッ!
「ありがとなケニー!お前がいなかったら今頃どうなってたか分からなかったぜ!」
「皆さんのお陰ですよ。」
まだ酒は飲めないけども、大人数で飲み交わすのはとても楽しい。今話しているおっさん冒険者達は初対面だけど、何故だか話が弾む。
ガラガラ
「みんな!今日のために用意したメインディッシュだ!」
会場に、小さな小屋くらいある大鍋が到着していた。この匂いは…
「オトナリ鍋だ!」
地元の鶏や野菜が入った塩味の鍋、一般に『水炊き』って呼ばれてるものだけど、ここのは特別。最高に美味いんだ!
「3杯くれ!」
「なんの5杯!」
「甘いな、俺は寸胴でいく!」
「欲張り過ぎだろ…」
あれで400人前あったらしいが、5分で消えた。
「えー。もう無くなっちゃった?まだ一杯目なのに…」
ジェニファーは不満そうに、今ある分を少しづつ口に運んでいる。よっぽど食べたかったんだな。
「スープだけならあるけど…それでいいかしら?」
配給係のお姉さんがジェニファーを引き止めた。
「もらおう!」
ドン!
「この寸胴でねー」
…なんか唐突に出て来たけど、オトナリではマイ寸胴が流行ってるのだろうか?確かに、それくらい美味しいものではあるけどね。
ズズ…
「美味しい………けど、やっぱり具が欲しいなー」
鍋は具とスープが合わさって完成するものだ。具が欲しくなるのは当然の真理だよな。
カッ…
あれ?『冒険の書』が光った?
俺は『冒険の書』を開いた。
『うどん』
攻撃魔法の載ったページの一部が輝いている。…もしかして、使えるのか?
「うどん!」
俺は『冒険の書』を開き呪文を唱えた。
ニュルニュル!
「なにこれー?…あー、麺か」
何と寸胴の中に、白い麺のような物が入っているじゃないか!
「いただきまーす。」
チュルチュル
ジェニファーは未知の麺をすすった。魔法でできた物なのに大丈夫なのか?!
「おいしーい!」
ズルズルズル
とても美味しかったようだ!
「待って!」
「待たないよー」
ズルズルズルズル
「俺も欲しい!」
ズルズルズル
ズルズルズル
俺たちは一つの寸胴に入った『うどん』を分け合った。今日の宴で食べたどんなものよりも美味しかった。
「また食べたいなー」
「どうだろうなー?」
ジェニファーをダンジョンに連れて行くことが出来ればいいけど、それは出来ないことだ。
また同じ奇跡が起きる事を祈るとしよう。
〜〜〜〜〜
「ダンジョンの外で『冒険の書』を使っただと!…ケニー・ハントマン。調べてみる必要がありそうだ。」
「んっふ。無からうどんを作り出すとは。もしかすると、失われた古代魔法の一つ…『麺属性』の魔法かもしれませんね。」
周りはうどんのコシのようにざわついていた。
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