悪党を知ろう

 この世界ではヒーローと同じくらいに危険視すべき存在がいる。それは悪党である。ヒーローがいればヴィランもいる、この世界では当たり前の事だ。


 悪党は往々にして凄まじい事を企んでいる。

 その多くは金儲けであり、自分の懐を潤すばかりか世界を買えるほどの大金が欲しくてたまらないという事もある。その一方で信念や理想に燃えて爆破テロや無差別殺戮などのテロ攻撃で国家転覆を狙うテロリストという場合もある。中にはヒーローに対して恨みをもっていて、それを晴らすために騒ぎを起こす者もいる。

 三者三様の行動をしているが、共通している特徴は「人の命を軽々しく扱い」「説得できない」「普通の警察や軍隊では相手にならない」「あなたに害を与える」事である。


 彼らの特徴はヒーローよりは判り辛い。一発で理解できるような悪の組織のコスチュームを身にまとって悪事をするような連中ではなく、むしろ一般市民にカモフラージュして溶け込み、捜査機関やヒーローの目を欺く場合も多い。

 特に彼らのボスやリーダー格は滅多に表社会には出てこないか、経営者や実業家と言った「表」の顔を持っていて、悪事の兆候なども知りようがない。まさに困った存在である。


 この世界では彼らは「役割分担」されており、それによって脅威度や特徴も変わる。ヒーローより見つけ出すのは困難だが、コツを掴めば雑踏の中でも見つける事が出来るだろう。



■戦闘員クラス

 悪党の戦闘員。上に指示された事を実行し、破壊工作や追跡、銃撃戦などを行う。

 その多くがチンピラや傭兵崩れ、訓練されたギャングやテロ組織の構成員であり、数が少なければパトロール中の警官相手にも負ける事すらある。ただし、武装と数によっては簡単に蹴散らすだろう。ヒーロー相手には滅法弱く、反撃されて殺されたり、追っていたヒーローに逃げ切られる事が殆どだ。


・大抵はグループで行動している

・こそこそ行動し、事を起こす時は派手に動く

・隠密行動時は必ず市民に化けて、司法機関の目を欺こうとする

・武装していて、丸腰で行動する事は一切ない

・男性が非常に多く、年齢は20代~40代ほどが比率として多い

・荒事をしているので、他の市民に比べて顔立ちが険しく、厳つくなる

・総じて服装が没個性的になりがちになる


■指揮官クラス

 悪党の戦闘員を指揮する、現場指揮官。ボスからの指令を受けて、手駒を動かして目的を達成しようとする。経験が豊富で戦闘能力が高く、並みの治安機関では歯が立たないほどの強敵だ。単体で行動し目的を完遂する事もままある。しかし、ヒーロー相手には善戦できるだろうが、倒す事は出来ない。


・グループを指揮している、またはその先頭に立って行動している

・戦闘員クラスよりも目立っている、外見や顔に特徴がある

・武器や戦闘術などに拘りがあるケースも多い

・ヒーロー程では無いがタフで、事故・戦闘も生き延びやすい

・総じて戦闘員クラスとは違ったオーラを放つ


■黒幕・ボスクラス

 戦闘員や指揮官を統べる、悪党のボス。前線には現れないが、現場の安全な場所で事態を監視したり、多くの戦闘員を従えて身の安全を固めながら顔を出したりする。彼自身の戦闘能力は大した事がない場合が殆どであるが、社会的な地位、または人脈、影響力は高い。中にはヒーローをも圧倒する戦闘力を持つ者もいるが、大抵は部下たちが軒並み壊滅した状態で、ヒーローと一対一で戦う場合のみに力を出す。

 ただし、あなたがボス級の悪党と一緒の空間にいる事はあまりないだろう。


・後方にいて指示を出す

・常に周りを警備が固めていたり、完全に安全な場所から動かない

・状況が有利だと思われる場合のみヒーローの周囲に現れる

・権力者であり、発言力・影響力が高く、財力も高い

・CEO、政治家などの表の顔を持つ者もいる



 このような悪党たちと極力同じ空間にいないようにしよう。すぐにその場を離れて、安全な場所へと避難するべきだ。ヒーローは守ってくれる可能性を期待できるが、悪役はあなたに危害を与える可能性しか存在しない。そればかりか、あなたの元に近づいてくるケースもある。


 例えば、あなたが働いている職場に「清掃業者」だとか「宅配会社」と言った身分を名乗る者たちが現れ、あなたにここに来た理由を説明する、そこで「上司に確認します」等と言って振り返ろうものなら、次の瞬間、あなたは後頭部に一撃を食らってあの世へ行っている……という具合に、悪党は粛々と、時には何の予兆もなく現れて事を始める場合がある。


 だからこそ、観察力を鍛えて「悪役」を見抜く努力をする必要がある。事が始まってからでは遅い、事が始まる前に、悪役の特徴に気を配る事が大切である。


 一番楽に出来る手段は、指名手配犯の顔を覚える事だ。

 この世界では、世界的に知られる悪人であれば、連邦捜査局が指名手配をしている。指名手配情報の中から特に凶悪なものを探し出せば、少なくとも指揮官クラスまでの悪党なら見分けられるチャンスがあるかもしれない。


 ただし、黒幕やボスクラスはどうにもならないケースが多い。政府の諜報機関等なら、公に出ていない危険人物の存在も探知可能だが、あなたが一般市民なら、そんな情報を引き出すのは無理だろう。

 でも心配は無用だ。こうした黒幕やボスは、あなたが彼らの重要なターゲットや、急場凌ぎの人質として選ばれない限り関わり合いは無い。すべてのケリはヒーローが付けてくれる。

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