お前の特別に相応しくない

カネヨシ

述懐

「僕に優しくしてくれるから、僕はあの人たちを好きでいるんだ。善意に対する対価としての好意だ。でも、君を好きである理由はそうじゃない」


 あいつはそう言っていつも通り笑った。

 俺は自分が大概性格の悪い奴だと自覚しているつもりだ。面倒で、更に言えば気味が悪いから、人とつるむのが嫌いだ。身勝手な善意は利益になれば受け取り、気に入らなければ一蹴する。及第の出来に対する称賛は無駄だからと言わず、悪い点を指摘するばかりで他人の気分を害することが常だ。

 だのに、あいつはずっと俺を好いている。人の扱いが悪い俺の側はさぞ居心地が悪いだろうに、様子を伺いながら俺が好み満足するものだけを与え続けている。


 良いのかよ、それで。他の奴の方がお前に良くしてくれるじゃないか。その方がお前は幸せじゃないか。そうすれば、俺のせいでお前があらぬ噂を立てられることもなくなるんだぜ。


 なあ、そんな風に笑わないでくれよ。俺はお前に何もしていないのに、どうしてそんなに幸せそうなんだ。他の誰にだってその笑みを向けたことがないなんておかしいだろう。


 俺の気まぐれ程度で心底喜ばないでくれ。俺のためだけに生きないでくれ。俺はお前に何もしてやれない情けない奴なんだ。意地とプライドでお前を傷つけることしかできないはずなんだ。他の奴らが俺より劣ってることはわかっている。でも、お前を幸せにするのはそういう奴らの方が得意だろう。早く俺の元を離れて、どこかで幸せになっていてくれよ。


 俺はお前の特別に相応しくないんだから。

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