第7話 5月24日(月)


5月24日(月)


 神代君が近づいてきたので、思わず安藤君を見てしまった。

 安藤君はすでにポケットに手を入れようとしていた。

 そして、手を入れたまま動きが止まった。


 神代君が安藤君の所にたどり着いたところで、安藤君はポケットから手を出した。


 苺大福である。プラスチックのケースに入ったちょっと豪華な苺大福である。


「まじか!」


 今までで一番かさばる気がする。神代君も驚いて次の言葉が出てこない。

 しばらくしてから、ため息の後に言った。


「まあ、うまそうな苺大福だな。」


 その言葉で、机に突っ伏していた稲葉さんがむくりと起き上がり、振り向いて手を差し出した。


「くれ!」


 安藤君は無言で稲葉さんの手のひらに苺大福をのせた。

 稲葉さんは、プラスチックの蓋を外し、苺大福を口の中に放り込んだ。


 私たち3人は稲葉さんがもぐもぐと苺大福を食べきる様を見守っていた。

 あっという間に苺大福を食べ終えた稲葉さんは、安藤君にお礼を言った。


「ありがとう。これで今日一日も頑張れる。」


「放課後だが?」


 安藤君がそう言うと、稲葉さんは答えた。


「部活がある。」


 そして、前を向き机に突っ伏してしまった。


「部活は?」


 神代君が尋ねると、稲葉さんは突っ伏した姿勢のまま答えた。


「食後の腹ごなしに30分寝る。」


 腹ごなしに寝るの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る