第3話 4月19日(月)
席も隣だし安藤君とは時々話すようになった。ただ、安藤君は無口、私は人見知りなので、会話は弾まない。
授業中にもときどき隣の人と相談して考えろ、というような指令が下る。英会話では隣の人と会話せよとなるし。
私と安藤君のたどたどしい会話を聞いて、安藤君の前の席の有田さんがよく噴き出している。稲葉さんは無表情で笑わない。
4月19日(月)
「ナツオ、ティッシュを・・・」
放課後、神代君がやってきた。どうやら神代君は鼻炎のようである。放課後までにティッシュを使い切ってしまうらしい。安藤君は商店街に住んでいて、毎日ティッシュ配りのお兄さんからティッシュを2つもらうらしい。
安藤君はポケットからスーパーボールを取り出した。
「そんなでかいスーパーボール、鼻に詰めるのは無理だな。・・・青いな。」
神代君が青いなと感想をもらしたら、机に突っ伏していた稲葉さんがむくりと起き上がり、後ろを向いて手を出した。安藤君は黙ってスーパーボールを稲葉さんの手のひらにのせた。
稲葉さんは前を向き、マジックを取り出しスーパーボールに何か描き始めた。
私たち3人は黙ってスーパーボールに何か描いている稲葉さんの背中を見ていた。
安藤君のもとに戻ってきた青いスーパーボールには世界の大陸が描き込まれ、地球になっていた。
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