安藤君は家を出る前にポケットの中を確認するべき。

まこ

第1話 入学式の日


 高校生になって最初に驚いたことは出席番号だった。10番、二桁である。


 相田、赤川、秋山、有田、安藤、「あ」だけでも5人もいる。私の前は稲葉、そして私の後に遠藤、小野田と続く。

 私の名前は宇佐美実佳うさみみかという。ツインテールではない。テールはしっぽだ。耳ではない。


 最初のホームルーム、自己紹介である。気が重い。

 安藤君はサッカー部に入るらしい。稲葉さんがキムチが嫌いだと訳の分からないことを言っている。

 私の自己紹介は何とか無難にやり過ごせたはず。

 小野田さんの次の神代君が、「今年の夏は甲子園に行ってきます。」と自己紹介をして教室がどよめいた。その後にサッカー部に入部すると宣言したので皆がずっこけていた。甲子園には観戦に行くだけだそうだ。


 神代君の自己紹介で教室が沸いている最中、安藤君のつぶやきが聞こえてきた。


「ア行が40パーセント………」


 30人のクラスで 12人がア行である。確かに 40パーセントである。



 明日から模試があるそうだ。いきなりである。今日のうちに名前や学校コードなどをマークしておくらしい。持ってくるものの中に鉛筆があったのはこのためか。

 カバンから筆箱を出そうとして、筆箱が無いことに気が付く。昨日、確かにカバンに入れたはずである。

 首をかしげていると、安藤君が気づいた。


「鉛筆、貸す?」


 私に尋ねながら、筆箱のチャックを開ける。なぜか前の席の稲葉さんが振り向いた。安藤君が鉛筆を取り出す。

 プリ〇ュア?

 安藤君じっと鉛筆を見つめている。5秒くらいたってから、その鉛筆を机に置き、もう1本取り出した。

 プリ〇ュアの鉛筆である。

 私にプリ〇ュア鉛筆が差し出された。受け取った。


「萌死にさせるきか。」


 机に突っ伏した稲葉さんの呟き声が聞こえてきた。


 家に帰ってから妹を問い詰めた。アクシデントがあれば何か出会いがあると思ったらしい。


 魔法少女と出会ったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る