45.勝敗の行方
「前座」以外の腕相撲は滞りなく進んでいた。大体、力の順、あるいは魔力で増強して対抗している知略組が勝ち上がっている。
順当にいうならベルゼブブ、サタンのふたりが対極にある戦法で頂上決戦か。
なお、ベルフェゴールは初戦敗退。やる気のなさっぷりは全員お見通しな上にできれば自分が上に上がりたいので、敢えて咎めない。
そこから先はアスタロトは静観していたが……
「人間組って参加、私だけなの?」
忍のその一言でまた時限爆弾のスイッチが入ってしまう。
「オレ無理だよ。どう見てもへし折られて終わる」
「秋葉、それを言われると消去法で俺が参加することになりそうなんだが。いくら強化を受けていてもここで相手は……」
「ツカサは強いのか? そういえば、初めの頃に閣下もそんなこと言っていた」
「……」
ベルゼブブに目をつけられた。
「筋力があるわけじゃないんだ。ちょっと細工で強化されているだけで」
「司は武器を使った方が強いけど、この際やってみたら?」
「わお、エキシビションマッチ!? 応援しちゃうよ~」
どっちを。
アスモデウスのテンションが高いのはいつものことだが、なんだかんだで盛り上がっていた七罪たちも乗り気だ。
乗り気と言っても観客として騒がせたい感じなだけであるが。
「忍……」
「ごめんね。怪我したら介抱する」
「したくない」
さすがに渦中に放り込んだ感が半端ないので、本気で謝る忍。当初は確かにものによっては参加するとも言ったし、引き返せそうもないので、とりあえずベルゼブブと一戦することになった。
勝てるわけがないのだから、適当なところで退けばいいかとため息をつく司。
「待て」
しかし、気づくと忍がムービーを撮るべくデバイス片手に待ち構えていた。
「何してるんだ、忍!」
「森ちゃんに送る。思い切り負けたら赤っ恥だから、全力でお願い」
「ーーーーーー!!!」
謝りたいのか、面白がっているのか、どっちだ。
さすがにみっともないところは見せられないと思ったのか、表情を変える司。片割れの森には甘い。
「人間のわりにやるじゃない」
「ベルゼ、どうしたの。いつもなら瞬殺では」
「腹が減って……」
「…………」
困り顔で言われても。刹那とはいえ、途中までいい勝負をしていたはずが、一気に辺りの緊張感が削がれた。
「今度公爵……ダンタリオン閣下が、人間界に行ったらお土産にお菓子買ってきてくれるって」
「ホントか!!」
ズダン!
高速で司の腕が倒された。
「忍……お前どっちの味方なんだ……不意打ちだけに司さんめっちゃ痛そうだけど」
「うん、ごめんね。心からお詫びします。でも今のはベルゼがコント並みの反応だったからむしろ負けるが勝ちみたいな」
「意味の分からないことを言わないでくれ」
右手の甲をさすっている司。申し訳ないのでそれくらいは代わりに自分がさする。……視線を感じる。
「シノブ―ぼくも負けちゃった。さすってー?」
なんか腹立つ。
「司くんで手一杯。秋葉がさすってくれるっていうからそっちで」
「またそうやってオレに回してくる!」
アスモデウスがわざと負けたので、概ねの順位が決まった。
何の参考にもならなそうな腕相撲の結果を記しておく。
1.サタン(頭脳戦&ベルゼブブの空腹負け)
2.ベルゼブブ(力技)
3.レヴィアタン(裏人格発動)
4.マモン(ふつうに力技)
5.アスモデウス(脱落)
6.ベルフェゴール(自主敗退)
何も決まりそうにない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます