【S-side】異世界?いいえ、魔界で悪魔の新人教育を手伝っています
梓馬みやこ
序.悪魔の新人教育
目の前には、七人の悪魔たちがいた。
正確に言うならば、彼らは人間の姿をしている。誰もかれも、個性、もしくは美形という言葉で括られそうだが、空気が凍り付きそうなほど冷ややかな視線を、訪れた三人の人間に向けていた。
もっと正確に言うならば。
「君がシノブ? 初めまして。ぼくはアスモデウスでーす! よろしくね」
「ちょ、やめ。ソーシャルディスタンスでお願いします!!」
一人だけ妙にフレンドリーにいきなりハグしてくる輩がいたので、冷徹なまなざしは六対だ。
未知の経験に、ギャーと悲鳴を上げたくなる忍。残りの人間男子二人はスルーされている。
「人間の女の子ってさーかわいいよね 柔らかくて気持ちいー」
……気持ち悪いんですけど。早く誰か剥がして。
見た目は人間だが、明らかに人外の力の持ち主なので、拘束されたまま忍は鳥肌を立てている。
「助けて! アスタロトさん!!」
「……アスモ、いいから落ち着いて席に戻ってくれる?」
助けを求めたのは、いきなりの温度差にそれぞれの意味でフリーズしている同行者二人ではなく、ここへ案内をしてくれた褐色の肌に、白にも近い銀の髪を持った青年だった。見た目はほぼ人間だが、魔界のヒトである。
ソロモン七十二柱の一、アスタロトは魔界の公爵で日本には観光神魔として訪問。 その際に、神魔専門の外交官である秋葉(あきば)、護衛の司(つかさ)、忍と面識を持った。
その後は、妙に人間界に流暢な感覚で、長らくのおつきあいとなっている。
今回三人の「魔界滞在」の責任者でもあるので、困ったときに頼るヒトは一択だ。
そう、ここは魔界だった。
「えー? でも今回って、ぼくたちに生の人間と触れ合わせてそれで基礎教育が終わるってことでしょ? たくさん触らないとわからないよ」
「……触れ合いってそういう意味じゃないから。とにかく座って」
「アスタロトさん、今なんて?」
基礎教育?
生の人間との触れ合い?
今回の魔界訪問の発端は神魔と共生する現代日本からの「親睦」「交換交流」だったわけで。
聞いてない。
「あぁ。人間との触れ合いは親睦に入るから間違ってはいないとは思うんだけど」
「いえ、そういうことじゃなくて」
「アスタロトさん?」
どういうこと???
魔界へとやってきた三人の頭上にも疑問符が飛び交っている。
ついに秋葉が聞いてくれた。
「えっと、オレたちがここに来たのって……」
「ここにいる七人の悪魔……君たちの国で言う『七つの大罪』。彼らの教育を手伝ってもらいたいんだ」
……。
「今、なんて?」
「悪魔の新人教育、手伝ってくれる?」
大事なことなので、二度聞いた。
大事なことなので、とてもわかりやすく目的のみアスタロトは答えなおしてくれている。
悪魔の新人教育?
魔界訪問一日目。到着早々、大変なことが起こっている模様。
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