word51 「白いパソコン 何」③
気持ちが抑えられなくて、まずあり得ないと分かっていながら連打した。バグでも何でもいいから、1日に2度目の検索をさせてくれないかと願った……。
しかし、もちろん黒いパソコンからのレスポンスは無くて……僕はまた日を跨ぐまで落ち着かない時間を過ごすという選択をする他なかった。
「白いパソコン 何」という検索をしようと思った理由は、お隣さん家の地下にあったあの白いパソコンが、黒いパソコンに似ていると思ったからだ。性能はそのまま黒いパソコンの劣化版のようなものだし、色が違うだけで形も……。
まるで黒いパソコンのたまごみたいな、そんな雰囲気を白いパソコンからは感じた。あれがこの先の未来で進化すれば黒いパソコンになるんじゃないかと。
だから、白いパソコンが作られた理由とかこれからどんな風に利用していくつもりかなんてことを検索すれば、黒いパソコンの謎にも迫れる。そんな気がするのだ――。
もしかすると、この検索もエラーになるかもしれないが、それはそれでビンゴ。黒いパソコンの謎にいくらか迫れたと手応えを感じられるはず。白いパソコンは黒いパソコンと深く関係しているのだと。
僕は夕飯の時間まで昼寝をした。ただ特に何もせずに時間を潰すよりはその方が有意義だと思ったから。けれど目を閉じてもすぐには寝られなくって、中途半端な時間しか眠れなかったので、起きた時には寝る前より重い眠気にまとわりつかれた。
昨日とは違って授業の予習と宿題はやった。今日は金曜日なので別にやる必要は無かったのだけど、逆に金曜日だからこそ昨日よりもやる気が出た。週明けまでの課題をさっさと終わらせて迎える土曜日は格別だ。
ただそれも集中力がないものだから、いつもの倍以上の時間がかかってしまった。キリが良いタイミングになる度にシャーペンを置いて頭を別の方向に向けた。
また黒いパソコンのEnterキーを叩いたりしてみては、そういえば誰かに黒いパソコンを譲渡したときその日の検索回数はリセットされるかという疑問を思い出し、また課題を進めるペースを落とした。
結局課題が終わったのは日を跨ぐ少し前くらいのことだった。
そして、0時を回ると、またすぐに黒いパソコンで検索した――。
「白いパソコン 何」
ワードの入力は既に終えていて、出てくる答えの予想も十分にした。だから、即実行。
白いパソコンが何なのかについての僕の最終結論は「人類を危機から救う為のもの」である。これは願望を含んでいて、黒いパソコンが僕の元に来た理由の予想を逆算したものである。
黒いパソコンの存在理由が地球や宇宙を守るためだったのなら、それの卵みたいなものである白いパソコンは人類くらいを守るためなんじゃないかと。そういう答えなら色々としっくりくる。
他に何かあるだろうか……逆に地球を支配するためか、ただ単に宇宙人の娯楽か。あんなものを作るメリットは他に……全く予想していなかった結果が出てきてもそれはそれで面白い。
いつもよりも長いグルグルを表示してから、黒いパソコンは結果をちゃんと表示した。
「あなたの隣の家の地下には白いパソコンがありますが、そのパソコンには地球にある大体の疑問の答えが入っています。使用者は正しく操作すれば、その答えを知ることができるでしょう。検索範囲は地球に限定されていて、機能はこのパソコンに遠く及びませんが、まあ優秀なパソコンと言えます。――」
どことなく上から目線で見下しているような文章がそこには混ざっていた。白いパソコンも十分に物凄いもののはずだが、間違ってはいない。
「白いパソコンが製造され、地球に持ち込まれた理由は、自然と地球人を保護するためです。地球人の力だけでは解決できない未知のパンデミックや災害が起こった時に、製造元の惑星の住人が早急に対応できるように。また、そんな災害が起こらないようにするための日々の管理が主な使用用途です。さらに、白いパソコンを地球人に譲渡して、地球人の力だけで地球を守っていけるようにする、譲渡された地球人がどういうことを検索するかを研究するという計画もありました。」
これは……正解ということでいいんだろうか……。
結果を読み終えた僕はまさかの予想通りに困惑した。多少意外な事実も混ざっているけれど、予想通りと、そう言っていいものだ。やっぱり、白いパソコンは「人類を危機から救う為のもの」だったのだ。
正解……でも、なぜだろう……なんだか思いの外しっくりこない。
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