word38 「オ〇ニーされた回数 ランキング」①

 冬なのに足出しすぎだろ――。


 僕は、ある日の教室で思った。少し離れた席に座っている女子が、股を広げて座っていたのだ。窓際の席で、壁にもたれているからかスカートもかなり際どいラインまで上がっている。


 今にも見えそう。というか、姿勢を低くすればたぶん見える……。


 帰りの前のSHRのさらに前の時間。返却される課題だとか連絡プリントとかの配布物を日直が配っている時だった。後ろの席に配布物を渡すときに、僕はその景色があることに気づいた。


 エロいと思って見たのではない。迷惑だなとか、寒くないのかという気持ちである。高校生男子の僕だって、見れるならいつでもどこでも誰でも構わないという訳ではない。


 教室で女子の足をじろじろ見ていて、それを誰かに気づかれるようなことがあったらまずい。ルックスが好みでない女子のものならスルー安定だ。


 だから、見てもすぐに目を逸らして、何も気付いてないふりをする。自然な感じで、何事もなかったかのように配布物を渡す作業に戻った。


 教室で女子のパンツが見えそうだった場合、それを見たいにしろ見たくないにしろ、男子は気を付けなければいけないのだ。見る時は、周囲から怪しまれないよう細心の注意を払って、上手く横目で見たりしないといけないし、見れば息子を刺激してしまって、ズボンがもっこりしてしまう危険性もある。


 今回みたいに自分にとって興味が無い女子のパンツが見えそうなときはただ注意するだけ、注意したところでメリットもないのに、自分は変態ではありませんとアピールしなければならない。


 よって僕は、後ろへ配布物を回すときに前を向いたままの姿勢を強制されていた――。


 

「おい、さっきホームルームの前さ、笠野さんのパンツ見えてたよな」


 しかし、僕が好みでない女子を好きな人もいて、その1人がSHRが終わると話しかけてきた。たぶんクラスで1番スケベ心に素直な男だ。


「まあ、見えてたね」


「やっぱお前も気付いてたか。白と青のしましまだったよな。俺めっちゃ見てたわ」


「お前、あんまり見るもんじゃねえだろ」


 背が低めの丸刈り野球部は、嬉しそうな顔をして、周りには聞こえないように小声で話す。一緒になって僕も小声で対応した。


「だってあんなん見てくださいって言ってるようなもんだろ。見せてんだよあれは」


「あの人けっこう頻繁に見えてるよな」


「うん。注意してないね。俺日常的に笠野さんに注目してるもん」


 笠野が好きではない僕は少数派の人間だった。笠野は男性的にちょうど肉付きが良い体をしていて、胸も尻もでかい。顔もブスではなくそこそこに良くて、クラスの男子からは人気があった。


 何より豊満な体をしているくせにだらしないのだ。性格もさばさばしていて男子からの目を気にしてない感じがする。


 だらしなさが僕は受け付けないけど、エロいと評判の女子だった。


「昨日は白いパンツだった」


「あ、昨日も見えてたよな」


「お前も見てんじゃん」


「だって見えるんだもん。この席に座ってたら」


「むっつりめ。じゃあな」


 部活があるスケベな友達は自分の席に戻って荷物を背負った。その背中を見て、きっとあいつは笠野さんをおかずにしていたりするんだろうなと思った。


 小柄な彼がサイズの大きい女で興奮している様子がなんとなく想像できてしまった。


 そして同時に、笠野はどのくらいの男子のそれになっているんだろうと疑問に思う。やっぱりかなりの数の男子がお世話になっているんだろうか――。


 学校を出て、帰り道を歩いている時も、出くわした疑問の答えが気になってしまって……さらにその疑問はもっと広がった。皆、普段誰でやってるんだろうと……。


 そんなことを考えながら、昼間の道を堂々と歩いている僕は確かにむっつりなのかもしれない……。


 さらに家に帰った僕は迷いなく今日の検索ワードをそ決めた。もう幾度も検索してきた恒例の下ネタ分野のものである。そして今回もまた、実際に集計することは絶対に不可能なランキング調査だ。


『オ〇ニーされた回数 ランキング』

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