word12 「ピラミッド 建造法」

 ある日の世界史の授業で担当の先生が話をした。


「皆さん知っていますか。このピラミッドという建造物には未だに解明されていない謎が多く存在するんです――」


 授業の主題とは少し逸れた脱線話だった。授業中に時折訪れる先生個人が話したいこと。テストの話を聞いているよりはちょっと面白かったりする時間だ。


「ピラミッドの建造法だったり、何の為に誰が作ったのか、内部には謎の空間も存在していたりとたくさんの謎があって、今も調査している学者がいます。中でも最も大きいものは世界の七不思議の1つに数えられているほど――」


 僕も先生がその話を始めた時に、机の上の教科書とノートを見ることをやめて顔を上げた。


「先生も興味があることなんですよね。特に建造法。よくたくさんの奴隷たちが汗水垂らしながら石を積み上げたっていう話を聞きますし、ピラミッドを作ってる絵があったらそんな風に書かれてますよね。でもあんな大きな石を人力だけであの高さまで積み上げるのって普通に考えて無理なんですよ。しかも奴隷の身分の人間が」


 たしかに。何でだろう。そう思った時に僕は既にノートの端っこにメモを取っていた。


「じゃあ優れた建築法で優れた技術者が建築に関わってないとおかしいんですけど、次はその当時にそんな建築法があったのかって話になってくるんですよね。奴隷だと思われていた人たちは奴隷じゃなかったのか、そもそも本当に王様が墓として作らせたのかって話にも繋がって行くんですけど――」



 ――そんな授業があった放課後、僕はたまにはこんな日があってもいいかという気分で黒いパソコンの前にいた。


 ほとんどのことを自分が知りたいことや自分の利益の為に使ってきたこの黒いパソコン。その気になれば当然僕だけの疑問じゃなくて、世界中の謎を解明することもできる代物だ。


 本日はその1つを知ることに使う。午後の授業中に興味を持ったことを調べてみることにしたのだ。


 今まではあまり興味を持ったことはない分野だ。普通のパソコンやスマホで調べようと思ったことも無い。けど世界の謎の真実が知れるなら1つくらいなら調べてもいい。


 既にノートには書かれている検索ワード「ピラミッド 建造法」。僕はそのワードを黒いパソコンへ入力した。


 こういう謎って世界にはいくつもある。建築の分野でいくとモアイとかストーンヘンジの話も聞いたことがある。誰が何の為に作ったのかはっきりとしていない建造物が世界に点在している。


 黒いパソコンは答えを数秒で表示した。幾人もの学者が熱を注いだ疑問の答えをたったの数秒で。


「ピラミッドは周りに巨大な傾斜路を作って建造されました。今世界にあるピラミッド建造法の仮説の内では直線傾斜路説が正解になります。また傾斜路を使って石を高い場所へ運ぶときには現代でも開発されていない特殊な車輪の技術が用いられています――――その方法はこのパソコンを古代のエジプト人が使って調べました。」


 世界の謎は僕にとって、その謎が解明されたから何なのという感想を抱く分野だった。だから、調べてみたは良いもののよく分からないことを説明されてピンとこなかった。


 しかし、最後の1文が僕を驚かせる。古代エジプト人がこのパソコンを使っていただと。


「ちなみに世界の謎の多くはその時代に無い技術や知識をこのパソコンによって得た人物がいることで発生しています。」


 はー。へー。そうなんだ。ヘー…………えっ?え?

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