七夕の夜空
時は流れて、七夕の日が来た。
その日は早めに修行を切り上げて短冊に願いを書いて笹に吊るす事にした。
この頃になると、チーム邪王猫は全員開眼まで開けていた。
集太郎とペラアホは監視虫を会得。
レモンは土竜の一生を会得。
骨男は文武の鍛錬が進む。
クラブは砂漠並みに乾燥しても平気になっていた。
タレは水中で自由自在に泳ぎ回れるようになっていた。
鬼市は武蔵が保証人となる事で千里眼の力だけ返してもらった。
――七夕の短冊にそれぞれが願い事を書いている……。
『番犬になる』とニャン吉。
『花いっぱい』と集太郎。
『バルサミコとの再戦』とペラアホ。
『皆の無事』とレモン。
『発明王』と骨男。
『大音楽家』とクラブ。
『国士無双』と『両親の真実』がタレ。
『閻魔の信用を勝ち取り魔法と免許も返してもらう』と鬼市。
そして『弟子の大成』と武蔵。
骨男は「おし、おめえら、博士が用意してくれたモウレツ屋製の『
笹には既に苦歩歩の短冊が吊るされていた。
『鬼娘、マサカリがさ子の全地獄総選挙トップ当選』
ニャン吉達は見て見ぬふりをした。
ニャン吉は吊るされた短冊を見る。
「集太郎……『花いっぱい』って何だにゃ?」
「
「……えっと、うん……。で、ペラアホは『バルサミコとの再戦』って友達じゃなかったのかにゃ?」
「永遠のライバルー」
「……」
ニャン吉は武蔵の短冊を見る。
「これはにゃ……」
「『弟子の大成』だ」
ニャン吉は感激のあまり「師匠ー!」と大声を上げながら武蔵に飛びついた。
「こ……こら! 何をする!」
「にゃー! 絶対に番犬になるにゃ!」
「や……やめろ。すぐ下りろ……服が破れる……」
武蔵の袴はボロボロになってしまった。爪を立てたニャン吉は叱られた。
――それからニャン吉達はバーベキューを始めた。
タレは焼き鳥を食べている。そのタレにニャン吉は聞いた。
「両親の事、気付いたにゃんね」
「……、私を殺そうとした魔物が『お前も両親と同じ場所で死ね』と言っていたクエッ。ニャン犬は何か聞いているのか?」
ニャン吉は直火から聞いた事を話した。
「……分かったクエッ。真相は必ず突き止めるクエッ。今日は飲もうクエッ!」
――本日は快晴である。夜空を見上げると満天の星々。神秘的な星の光が魔界を照らす。月がきれいではなかった。月のせいで美しい夜空が台無しであった。全部月が悪い。許せん!
天の河を渡ってきた織姫と彦星は、飲み過ぎて天の河に吐いていた。それを見たクラブは「まるで乙姫様だぜ」と上機嫌。
「ここで一句、七夕に下呂で染まった天の河。松尾カツオでしゅた」と集太郎は俳句を読む。
夜空の星を見て――もちろん月の事は視野に入らない様にしながら――星について語り始めた。
「あれは何て星座だっけよ」
「あれは
「詳しいにゃんねクラブ」
「夜空の星々が音楽を奏でる様は俺にいつも哀愁を起こさせる……む! 織姫と彦星の周りにカバが集まって来たな。そして……一斉に脱糞したぜ! マジでしやがった。マジうける」
「ここで蝶々が一句。七夕に汚物流れる天の河。松尾カツオでしゅた」
「博士! ビールおかわり!」とレモンの声は夜空に響いた。
苦歩歩は一杯酒を飲むと、火の輪くぐりを始めた。
――山田もっさんもその頃七夕で盛り上がっていた。
「やっぱり夏はビールだぜ」ともっさんが口にすると小次郎は「いいや焼酎だ!」と言い返す。二人はにらみ合う。
花畑はお上品に「酒をかけたろうかですわよ」と一言。
キッツーネ、ヌキダヌ、ツンは酔っ払って寝ている。
――イーコ・ブールはその頃、夜空の星々にうっとりとしていた。
「いいわね、こういうの」
「どこがじゃ! 一つも胸が熱くならんわ」
宗厳の反論にイーコは激怒したらしい。
――真珠あああはその頃、疲れて寝ていた。付き人の亀太が独り言ぶつぶつ。
「月以外はいいべや。織姫と彦星もナイスギャグだ。カバが一番かわいいべ。夜空のトイレだ」
――ジワジワ・トル・ベントトーウはその頃、皆で金を数えていた。
「けしからん! 地獄の沙汰も金次第じゃというのに!」
卜伝の言葉にジワジワも納得する。
「金がなさすぎるのも問題だな」と溶けこっこが言うと本代返背は「自分の貯金箱開けて何するでありますか!」と返答した。
――夜空に願いを込める番犬候補とその仲間たち。織姫と彦星が天の河を汚物に変えていく神秘の夜。カバが更に追い打ちをかける便秘の夜。伏魔殿は今も不正を働いた者を探して粛清をする。
『次回「修行の終わり」』
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