第28話 さかにゃが美味しいにゃ
ビッグ5と呼ばれる5人の最強番犬候補の存在が明らかになった。その1人、セカンドペンギンのイーコ・ブールを退けたニャン吉。その強さは、並じゃない。
イーコを退けたその夜。滝行で疲れて泥のように眠るニャン吉の背中に歪んドールが何かをおいた。
(何だにゃ?)
気にはなったが、ニャン吉は眠かったので起きるのをやめた。
――翌朝。
『余命26日』
ニャン吉は滝行を再開。今度は一気に1時間うたれてみた。ニャン吉はとうとう1時間連続で滝にうたれることができた。
「この調子だにゃん。初めはどうなることかと思ったけど、何とかにゃるもんだ」
この日も侵入者が十数人いたが、全てニャン吉が返り討ちにした。
その間の仲間の行動を書いておこう。
レモンは島を周り、調合に使えそうな植物を集めていた。
骨男は歪んドールを整備する。
虫たちはヒラヒラと散歩をし始めた。
鬼市は閻魔への報告書をまとめている。
手持ち無沙汰となったニャン吉は、警戒しながらも気分転換に海を見に砂浜へ。砂浜には、モウレツ屋が来ていた。ニャン吉はモウレツ屋が来ていると仲間に声をかけた。
モウレツ屋に群がるニャン吉と仲間たち。牛一は鼻輪をチリンチリンいわせながら商売を始めた。
「もう、何がいる?」
骨男は発明用の部品を買った。
レモンは植物の本を買った。
鬼市も本を買っていた。
ニャン吉は「宇新聞はあるかにゃ?」と尋ねると牛次は宇新聞をだしてきた。
宇新聞にはこう書かれていた。
『邪王猫のニャン吉、薄ら笑いのもっさん、セカンドペンギンのイーコ、騙し討ち貝のあああ、悪道徳のジワジワ、以下5名が番犬候補ビッグ5』
『毒地獄の麻薬事件、その爪痕は甚大だ』
『水地獄、大腸を破壊する寄生虫大量発生、今後駆除の予定』
宇新聞を読むニャン吉を見ていると、ふと気になってレモンは妄奸誌を立ち読みした。
『番犬候補ビッグ5、金で八百長』
『ニャン吉、麻薬を毒地獄で密売に失敗。次の標的は水地獄』
『もっさんの金座での黒い交流』
レモンは妄奸誌を一瞥すると、そっとモウレツ屋に返しておいた。不意に風が吹いた。砂埃が鼻に入った牛次はくしゃみを連発。手近に紙が無かったので妄奸誌で鼻水を出した。
「どうせこんなの売れ残るんだ。鼻紙に使ってもらえて感謝して欲しいもう!」
モウレツ屋は木造の小舟に乗ると去って行った。
――翌朝
『余命25日』
ニャン吉は元気良く起きてきた。
「今日はきつくないにゃん! でも、腹が張るにゃ」
「それなら、私が下剤を作りマショウ」
「頼むにゃん」
ニャン吉はレモンに下剤を作るよう頼むと、滝行開始。
集太郎はペラアホと三密について議論していた。
「要しゅるにペラアホ、三密というのはの、花の蜜の種類じゃ」
「いーや、違ーうよ集太郎。三つ子のことだーよ」
レモンはすり鉢で薬草をすり、ニャン吉の薬を作っていた。
骨男はヌンチャクを振り回していた。
鬼市は『猫の飼い方、しつけ方』という本を読んでいた。
1時間後、ニャン吉が滝から上がると首輪が青色になっていた。そして、少しだけ大きくなっていた。それに気付いた骨男。
「おい! ニャン公! おめえ首輪が青になってんぜ。水地獄に適応できたみてぇだな」
「にゃんと!」
ニャン吉は骨男の指摘で水地獄に馴染んだことに気付いた。
湖のほとりで草むらに座り『猫の飼い方、しつけ方』を鼻で笑いながら読む鬼市へニャン吉が走り寄る。
「鬼市! 水地獄に適応できたにゃん! 適応できたらどんな馴染み技を使えるようになるにゃ?」
ニャン吉の方を振り返る鬼市。
「自由自在に海を泳ぐ力さ。息もできるぜ」
「分かったにゃ、この力を『マリンキャット』と名付けるにゃん」
「クソだせーな」
話を聞いた骨男が「おう! ニャン公! ちょっと試してみろよ」と技の使用を促す。
「そうするにゃん!」
ニャン吉は砂浜へ走って行った。マリンキャットの試運転のため砂浜へ来たニャン吉は妙な光景を目の当たりにする。それは、クラブがレモンと虫たちに歌のレッスンをしているのだ。浜辺にクラブの重低音の声が響く。
クラブがレモンへ共に歌うように促す。
「よし! じゃあレモン。この毛ガニとラップを歌おうぜ」
「いいデショウ」
「よし、『
「パンダの給食はパンパンパンダ」
「ただ飯ぐらいは笹を食え」
「レモンの入れもんドコ行っタ」
「お前に言われちゃおしまいよ」
「ピザ屋が来ない、どうしたノ」
「電話に誰も出んわけで」
「カエルが帰ル」
「家は無い」
「「ケロッ」」
「布団ガ」
「布団が」
「布団ガ」
「布団が」
「フッ」
「ふっ」
「フッ」
「ふっ」
「「吹っ飛んだ!」」
「ありがとウ! 甲殻類」
「こちらこそ」
(にゃんだこれ)
駄洒落大百科を歌う2人に触発された集太郎も「蝶々も作ったんで、聞いてくりぇクラちゃん。『松尾カツオの地獄唄』」と言う。それを聞いたクラブは「俺にソウルをぶつけて来い!」と応えた。
「古池や、カワズ飛び込む、無様かな」
「いいぜ! もっと来い!」
「静けさや、岩も羨む、おせんべい」
「いいぞ! テンションマックスだ!」
「夏草や、兵どもの、焦げ跡」
「んー最高!」
「松尾カツオでしゅた」
(にゃんだこれも)
ペラアホまでが「最後は俺だーぜ。カニッチ」と言うのでクラブは「さあ、俺に見せてくれ」と応える。
「人間五十年くらいー、コテンと転けてクラクラとー、夢マンボウの如くなりー」
「最高にクールだったぜ! ペラアホ。一瞬侍が見えたぜ」
(こいつら大丈夫かにゃ?)
ニャン吉はクラブたちに声をかける。
「お前たち、何をしているんだにゃ?」
「ニャン吉様、一緒に甲殻類から歌を教わりましょう」とレアが無機質な声で誘う。
クラブも僅かな毛を風になびかせ、ニャン吉をクールに誘う。
「俺は水地獄の宮殿、竜宮城の宮廷音楽家の可児鍋クラブだ。どんな組織にも音楽はある。歌は心。歌は文化だ。歌声は国境を越えて人の心にも届くもんだ。番犬候補ニャン吉、お前も歌ってみな」
「そ……そうだにゃんね。確かに、歌は大事だにゃん。じゃあ、一番好きだった歌を歌いますにゃん」
砂浜で一同は手を叩き大盛り上がり。
「さかにゃがさかにゃが美味しいにゃん。猫猫またいで美味しいにゃん」
「こ……この歌は! まずい海の連中に聞こえたら」
海の連中に聞かれはしまいかと心配し海を何度も振り返るクラブ。そのクラブの心配をよそにニャン吉は笑顔で尻尾をフリフリしながら歌っている。
クラブが何度目かに海を見たとき、海面には水泡がブクブクと上がっていた。これはまずいとクラブは焦りだした。
「さかにゃがさかにゃが食べたいにゃん。美味しいにゃんにゃんにゃん」
「も……もうそのへんで」
クラブの静止も虚しく歌は続く。
突如、無数の魚たちが海面から飛び出してきた。まるで海が爆発したように水柱を立てる。驚くニャン吉たちは海を振り返る。
「何だにゃ!」
海面から顔を覗かせるのは、魚介類の鬼たちだ。
――ニャン吉は水地獄に適応できた。砂浜で皆と気持ち良く歌うと海から魚が……。
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