琴線

@jmry

第1話 匂い

ここの家、今日はカレーか。

こっちは煮魚だな。


取引先が近かった事もあって、久しぶりに明るいうちに帰路に着く道すがら、夕飯という戦場に立ち向う他人の家のメニューを自分の中で明かしてゆく。


なんだか、他人の家の生活感を土足で覗き見ているようでゾクゾクする。

さながらテレビドラマやAVの不倫モノの感じだ。


お、ここの家は鮭を焼いてるな。

色々なメニューの匂いを嗅いでたら腹減ってきたな。

今日は早く帰れる事だし、久しぶりにレトルトじゃなく料理でもするか。


すぐ目の前の角を曲がれば自宅アパートに到着だが

少し遠回りして買い物して帰ろう。


決めたは良いが、同時に少し面倒な気持ちが顔を出す。

もっと早くに決めてたら駅前の商店街で買い物できたのに。


まぁ、仕様がない。

一度家は通り過ぎるけど大通りを渡ったスーパーで

買い物をしてゆこう。


自宅に向かう道の角を曲がらずそのまま進む。

通りを一本、二本と越えると大通りに面した

大きな公園が見えてきた。

この辺りは元々新興住宅地にする予定だった様だが

国なのか、県なのか、はたまた民間なのか、

予算的な問題で頓挫したらしい。


目の前に見える公園も開発に合わせて整備されたものだ。


少し迷ったが、せっかく我々の血税で作ってくれた

公園なのだ、公園を通ってスーパーに向かおう。

夕暮れに近い時間帯、沢山の小学生が公園で遊んでいる。



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