短篇小説集「ョゴルィンッミペゥ」

さよならピスケス

さよならピスケス 1/1

　時報代わりにつけている朝の情報番組が、星占いのコーナーに差し掛かる。

『今日の運勢第一位は乙女座のあなた！　道端で小銭を拾うかも？

　今日の運勢最下位は、ごめんなさい。魚座のあなた。死にます！』

　そんなぁ。幸不幸のバランスが下振れすぎるよぉ。

　なんて、蠍座の私は他人事のように聞いていたけれど。

　その日、人類の約十二分の一が死滅した。

　⭐⭐⭐

『今日の運勢第一位は牡牛座のあなた！　割り箸が綺麗に割れるかも？

　今日の運勢最下位は、ごめんなさい。魚座のあなた。死んでます！』

　そりゃそうだ。死んでるもんね。

　蠍座の私は、昨日頓死した魚座の同僚の仕事を巻き取るために、少し早めに出社した。

　これはこれでアンラッキーだけど、死ぬよりは随分マシなんだろうな。

　⭐⭐⭐

『今日の運勢第一位は蠍座のあなた！　通り道で猫を見掛けるかも？

　今日の運勢最下位は、ごめんなさい。魚座のあなた。死んでます！』

　この辺りは野良猫が少ないので、猫を見れたら確かにラッキーかも。

　普段よりキョロキョロしながら歩いていると、道路脇のコインパーキングで、車の影に駆けていく猫を見かけた。

　かわいかった。

　⭐⭐⭐

『今日の運勢第一位は魚座のあなた！　この世の地獄を見ずに済みます！

　今日の運勢最下位は、ごめんなさい。魚座以外のあなた。世界が滅びます！』

　そんなぁ。前触れが無さすぎるよぉ。

　なんて蠍座の私は思ったけれど、よく考えたら、こないだ世界人口の約十二分の一が突然死したとこだっけ。

　世界の終末というものは赤いし熱いし、確かに地獄もかくやって感じだった。

　おしまい。