第4話君がいい

今なんと??




「不躾な頼みとは思っているが…」


「はい…あの…私とほぼ初対面ですよね?」




昨日、花屋で予約を受け付けただけですけど!


一体いつ、白羽の矢が立った!?




「何故!?」




心の声は隠せなかった。




「実はだ…。困っているんだ。」


「はぁ…何をでしょうか?」




困っている様子はわかる。


今にも、クッと奥歯を噛み締めそうな顔だった。




「…俺の上司に娘を紹介されて、気に入られてしまって…断っているのだが、意外としつこくされていてだな…」




まぁ、この見た目では、女はイチコロでしょう。


しかも、公爵家ですからね。


公爵家だからとお断りをしないのかしら。




「身分を出したらどうですか?」


「向こうは当然身分は知っている。だが、上司も公爵家だから中々押しが強いのだ」




どうやら、揉めずに断りたいらしい。


しかも、上司で公爵様なら確かに断りにくい。




「公爵令嬢ならいい縁談です。ご結婚なさったらどうですか?」


「…結婚相手は自分で選びたいのだ」




意外と誠実なのか、しかし、何故私に頼みに来る?


疑問は隠せず、聞くしかない。




「…どうして私に?」




クロード様は、すまない。と言いながら申し訳無さそうな顔になった。




「昨日、花屋で見送ってくれただろう。それを上司の娘が見たらしい。それで、君とのことを疑われて…また、結婚を迫られている時で…つい、その…君が彼女だと嘘をついてしまって…」


「はぁ?何故そんなおかしな嘘を??」




この人大丈夫か!?


いやいや、昨日女性に花を買いましたよね!?




「昨日の花をプレゼントした女性がいるじゃないですか!」




思わず、力が入ってしまった。




「昨日のは、後輩の女騎士の結婚祝いに騎士達と贈るためだ。俺が遅出だったから代表で買いに行っただけだ」




それで一番大きい籠盛りをだったらしい。


クロード様ならもっと良いものを贈れるだろうけど、騎士には平民もいる。


きっと、皆とお金を合わせたのだろう。




「きちんと礼はする。ぜひ頼まれて欲しい。この通りだ」




男前の騎士が私に頼むとは、本当にそのご令嬢が嫌なのだろう。


あまりの真剣な姿に可哀想に見えてきた。


確かに政略結婚は嫌だろう。


私も好きでもないハロルド様と結婚するのかと、悩んでいた。


今は婚約破棄されて、どこかほっとしている。




それに、私は婚約破棄したばかりだし、暇だし、彼女のフリぐらいならまぁいいか、と軽く考えてしまった。


どうせ今は縁談の話なんかないし。




「…私で大丈夫なのですか?」


「君が良いんだ。…君なら婚約も、」


「あっ、婚約者のフリまではいいんじゃないですか?ご令嬢が諦めればいいのでしょう?」




クロード様の婚約という言葉を遮りそう言った。




婚約者のフリまでは大丈夫でしょう。


そこまでしたら、クロード様がお相手が見つかった時に困るかもしれませんからね。




「クロード様、私で良ければお受けします」


「本当か?」


「はい」


「助かる。この礼は必ずする。何でも言ってくれ!」




明らかにさっきとは違い、雰囲気がパァと明るくなった。




そして、今日から私はクロード様の偽物の彼女に決定した。




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