第2話 入場

 粛々と。


 長ったらしい廊下を歩く。いや、歩かされている。


 両隣には厳ついマッチョマン。鎧か甲冑か分からないが、硬そうな防具を装備している。腰の部分に剣も見える。


「あの……」


「「………………」」


「えー、すみません、少しよろしいでしょうか」


「「………………」」


 相変わらず何も応答がない。もしかすると日本語が通じていないのだろうか。とはいえ何か言葉を発しているのは分かるだろう。だのに無反応。


 何度か立ち止まってコミュニケーションを取ろうとするも歩行速度を緩めるたびにギロッと睨まれ、あえなく断念。怖すぎる。


 となれば粛々と歩き続けるほかにない。粛々。



 もう何十分経過したかと錯覚するほど歩き、とうとう目的地らしき場所に到着した。


 これもまた、出入りするためだけにしては大きすぎる扉である。この場にたどり着くまで何度か扉をくぐったが、いずれも日本人男性平均身長より少し上の自分にとっては巨大だ。ここまで大きくなくてよい。


 かといって両隣の筋骨隆々達も身長は180~190。大きいは大きいが、逸脱しているわけではない。


 つまり住人のサイズに合わせた設計をしたわけではなく、ここを訪れた人達へ見せつけるために巨大な造りとしたのだろう。


 なるほど。


 となれば扉の先にいるのは高貴な身分を持つ者か。なるほどなるほど。この程度の推理、造作もない。一時期推理小説にハマっていた俺をなめている。


「………………」


 しかし。


 その先が分からない。高貴な人が何の用事で俺を召喚するのだろう。まったく心当たりがない。心当たりがないといえば、場所も格好も状況も、そして自分自身のこともだけど。


 なるほど。


 これは、もしかすると、難事件かもしれない。読了したにも関わらず、最終的には解説サイトを読み漁らなければ事件の伏線に気づけない俺には難しすぎる。


「入れ」


「え、あ、はい」


 熟考する時間も与えられず。


 衛兵が初めて言葉を発したことに何故かドギマギしながら、巨大な扉をゆっくり押した。









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