エセ科学

エセ量子力学

害悪度★☆☆☆☆

知名度★★☆☆☆

トンデモ度★★★☆☆


関連:カルト宗教、スピリチュアル詐欺



 スピリチュアルは反科学のスタンスで人を集めるものだったが、最近はちょっと違う。

 ここでは少し寄り道をして、エセ科学のことを少し紹介することにした。

 陰謀論と関係あるのか? と思われるかもしれない。だが、エセ科学に引っかかる人は陰謀論を信じやすい。一見無害そうなエセ科学が有害な陰謀論の入口になることもある。スピリチュアルで自然派で反ワクチンでついでにアドレノクロム陰謀論信者、なんて人もいるくらいだ。


 量子力学の量子とは、原子や電子、中性子のような小さな粒のことだ。量子力学は古典力学ではカバーできないミクロ世界の物理現象を取り扱っている。理工系最悪の学問と揶揄されることもある。


 引き寄せの法則、という言葉を聞いたことはあるだろうか。思考や感情が現実を引き寄せる、という考え方のことだ。これは努力や行動を否定して思考だけで願いを叶えようとするものなので、信じればバカを見る。

 引き寄せの法則は、よくエセ量子力学と合体している。


 量子力学には「粒子は重ね合わせの状態で存在し、観測することで状態が収束する」という原則がある。その昔、量子の正体が光のような「波」なのか砂のような「粒」なのかという論争が物理学者の間で繰り広げられたが、答えは両方だった。量子は観測されていないときは波の状態で存在し、観測されているときは粒として振る舞う(詳しくは二重スリット実験でググってほしい)。


 エセ量子力学はこの「観測することで実験結果が変わる」という部分を拡大解釈し、「人間の意志が現実世界に干渉できる」と謳っている。それが本当なら、超能力が実在することになる。

 もちろん、二重スリット実験では人間の意識が実験に介入しているわけではない。ミクロ世界では、観測すること自体が実験結果を変えるほど大きな影響を与えてしまうのだ。

 どこから刃物が飛んでくるか分からないので、これ以上は書かないでおく。

 

 科学を利用するタイプのスピリチュアルには、「波動」「周波数」「振動数」「高次元」といった言葉がよく使われる。思考の波動を高める、ネガティブな感情は周波数が低い、高次元と繋がる、という具合だ。

 どれも実在する物理学の用語だが、この使われ方は間違っている。言葉が同じだけのまったく別の概念と言っていい。

 

 これが問題なのは、物理学用語を借りてスピリチュアルの信憑性を高めることで、用語の本来の意味を知らない人が騙されてしまうところにある。量子論、五次元、宇宙論、波動関数。賢そうで難しい言葉を使えば、たいていのものはソレっぽく見える。本物の物理学に携わる人間はたまったものではないだろう。

 あと、ネット上でよく「量子金融システムが始まり現在の貨幣価値が崩壊する」という話があるが、これは完全なるデマだ。


 本物の量子力学について何も知らなければ、エセ量子力学との見分けは難しいかもしれない。どちらも何を言ってるのか全然分からない。ただ、量子力学と人生観や成功法則を絡めた自己啓発ものは嘘だと考えていい。量子力学と集合的無意識(ユング心理学の用語)が合体したスピリチュアルものもあるが、こちらも無関係だ。

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