第102話 梅雨明け

7月


梅雨が明けた。

今年は去年よりも2週間以上早い梅雨明けだった。


「今年もようやくこの季節が来たね」


「プール!聖奈早く入りたいなー!」


「講義から帰ってくる頃には水が溜まってるはずだから、もう少しの辛抱だよ」

メイドとして働いてくれている、同じサークルの楓先輩は今日午前中で終わりらしいから監視を頼んでおいた。


「じゃあ、夜はバーベキューでもする?私大学の帰りに食材買ってこようか!」


「い〜ね〜!愛美達も今日来るよね〜?」


「うん、来ると思うよ」


「杏奈は今日撮影あるんだっけ?」


「うん、でも今日はそんなにかからないと思う、楽しみだね」


やっぱり自宅にプールがあるのはいいよな。

遠出しなくていいし、周りを気にすることもないし。


東京の家にもやっぱり欲しいよな〜、あとシアタールームにカラオケルームとか。

ボーリング場とか作ってもいいかもしれない。

新しい家も楽しみだなあ。



「「ただいまー」」


夕方、講義が終わって渚と2人で帰宅する。

キッチンからは先に帰っていたらしい美咲達が食材を切る音が聞こえてくる。


「「おかえり!」」


「もうプール溜まってるよー!早く入ろうよー!」


聖奈はゲームをしていた手を止めて、こっちに走り寄ってきた。

くっ付いてくるのは可愛いけど、今は暑いから少し離れて欲しいかもしれない・・・。


「プールは杏奈達が来てからにしよっか、それまで一緒にゲームしよ?」


「わかったー!美咲も一緒にしようよー!」

リビングとキッチンはそこそこ距離が離れていて、聖奈は大きな声で美咲に話しかけている。


「美咲もそれくらい任せてもいいのにね〜?」


「まあ、料理は美咲の趣味だしね」

今の時間はメイドさんもみんな居るし美咲がやらないといけないわけでもない。


「わかった!じゃあちょっと待ってね!」


「くっ・・・あっ・・・あぁ・・・もー聖奈ちょっとくらい手加減してよー」

美咲はゲームに真剣になって声が漏れている、可愛いなあ。


「強いでしょー!次は手加減してあげるねー!」

聖奈は強いなあ俺も全然勝てなかった。



「ただいま、あつかった〜」


1時間ほど4人でゲームをしながら待っていると、杏奈が帰ってきた。

外での撮影だったのかな?少し疲れているみたいだ。

ソファにだらーっとしている。



そのあと30分くらいしたら高校生組も家に来て、みんな水着に着替えてプールに入った。

花柄のビキニが多くて華やかだ、流行りなのかな?


「渚センパイすごいね〜!私も今度挑戦してみよっかな〜?センパイはどう思う〜?」

渚は相変わらず布面積がかなり少ない。


「アリサちゃんはどんな水着でも似合いそうけどね、今のも凄く可愛いよ」

いや、すごく見たいんだけど・・・彼女達も聞いているし、ここは話を逸らしておく。


「む〜、つまんないな〜!でもそっか〜可愛いって思ってるんだ〜?えへへ」


メイドさん達がバーベキューの用意をしてくれている。

楽でいいんだけど、知り合いばかりだと少し申し訳ない気持になるな。


求人でも出すか?でも全く知らない人を家に入れるっていうのもなあ。

美咲の友達の友達の舞ちゃんは他大学だしこの子に友達とか紹介してもらうのもありか。

東京にも家が出来るともっと人手が必要になるからな、今のうちに確保しておかないと。





7月後半


今月もまた高校生組を除いた彼女達みんなで東京に来ている。

引き続き土地探しのためで、5月6月ときて今回で3度目だ。


「ん〜、もうここら辺りにするか〜」


「渋々って感じ〜?あんまり納得いってなさそうだけど〜」


あんまり時間をかけると地価が上がったり、オリンピック関連で建築費が高くつくかもしれないし。

価格が上がるくらいならまだいい、買収や完成が遅れると困るからな。


「まあこれ以上時間かけたくないし、しょうがないかなって思ってる」


「後悔しない?もうちょっとじっくり時間かけてもいいんじゃない?」


都内中心部、特に港区とか渋谷区を中心に探していたんだけど、決め手になるような広い土地が見つからなかった。

あっても周辺の環境が悪くてなあ・・・。


「後悔するようだったらまた新しく建てればいいしなあ。ま、あんまり気にしないことにするよ」


「まあ浩介だもんね〜!それくらい大丈夫だよね〜!」


今しがた案内された渋谷区にある売地はそこそこの広さで、今まで見た中で一番環境がいい。

周囲に高いビルはないし、すぐそばには有名な女子大もあって高校生組の進学先にもちょうど良さそうだし。


「愛美達も頑張って連れてくればよかった、進学先の相談もできたのに」


「大丈夫じゃないかなー?アリサは私より勉強できるしー!」

そこだけじゃないんだけどな〜、どんな大学に行きたいかとかもあるだろうに。


「流石に夏休みとかじゃないと難しいからねー、でも15分も歩けば駅もあるしきっと大丈夫だよ!」


とりあえずここを買ってその周囲の家々を買い取っていくか。

買取とか行政への申請とか、そう言う面倒なのは全部委託する。


相場の倍でも10倍でもいくらでもかかってこい、言い値で買ってやる。


・・・くらいの意気込みで、反感を買わない程度に急いで買い進めてもらおう。

大体こういう少し大きな開発になると周囲の反対運動なんかが起きるからなあ。

できれば1年以内に終わらせたい。


今の資産管理会社とは別にここの建設のための会社も作っておく。

出来るだけ目立たないようにしておきたい。


あとは、この近くにあるマンションも空いている部屋はできる限り買い占める。

この分だと多分完成は愛美達が大学に入学するのには間に合わないかもしれないし、その後はメイドさん達に住んで貰えばいいからな。


これでなんとか目処は立ったな。

あとはできる限り急いで貰えればいいんだけど。


あとは設計事務所に依頼してどんな家にするか決めないとなあ。

これはすごく楽しみだ。

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