第72話 (2011年12月28日)大学受験

12月28日


申請をしていた全てのFX口座の開設が完了した。

完了したところから順に、残しておいた45億9000万円全額を入金している。


今度の人生での初めての取引は、ユーロの売りから始める。

1ユーロあたり平均101.7円で9万6390ロット(9億6390万ユーロ)、総額980億2863万円分を売った。


計算を間違えているわけではない。

FXではレバレッジが25倍までかけられる、つまり投資額の4%の証拠金だけを用意すれば取引できる。

そのため投入額としては、39億2114万円程度になる。


ユーロ円は1月に円高になった後、一旦円安方向に動いていたはずなので、来年1月に決済する。

これでどれだけ稼げるか楽しみだ、株よりも圧倒的に稼げるはず。


日本だとレバレッジ規制があるため25倍までしかできないが、海外の会社の場合レバレッジが500倍とか1000倍近く掛けられるところもある。


ただし国内と違い税金が総合課税になるため、かなり高くなってしまう。

ひとまずは、少しだけお金を入れて放置しておく。





年が明け、1月14日


今日は、センター試験の日だ。

年末年始は受験勉強一色で、なかなかに辛かった。


「いよいよだね!頑張ろうね!」

「もうできることはしたから、あとはリラックスしていこ〜!」

「聖奈ちょっとお腹痛いかもー・・・」


「みんな頑張ろうね、聖奈も今まで頑張ったから、大丈夫だよ!落ち着いて?」


聖奈は緊張している様子だったので、手を握って励ます。

他の2人は結構大丈夫そうだ、まあ模試の結果的にも余裕はあるのだろう。


「うん、ありがとー!」

聖奈の手は強張っていたが、顔には少し笑みが見えた。


「また後でね!」

「みんな頑張ろうね〜!」

「浩介ありがとうー、もう大丈夫だよー!」


「うん、がんばれ!」


教室の、この受験独特の雰囲気も懐かしい。

周りには別の高校の生徒ばかりで、彼女も友達も居ない。


時間になり、試験が始まる。

試験監督って大変だろうな、携帯をいじるわけにもいかないし、長時間暇なのは結構きついだろう。



「どうだった?」

試験が終わり、みんなで帰宅する。


「私は多分大丈夫だと思う!」

「私も〜!」

「聖奈はどうだろー、いけたようないけなかったような?」


「まあ、まだセンターだし一般入試ができれば大丈夫だから」


「そうだねー!多分大丈夫な気がするー!」

試験が終わるといつもの聖奈に戻っていた。

ほんとに大丈夫だろうな?


これから試験のある2月の最初の週までは勉強しないといけない。

彼女達とキャンパスライフを過ごすためにも頑張らないと。





1月16日


FXのチャートを見ると、97.2円まで円高になった後円安になっていたので、決済注文を出す。

決済額は1ユーロあたり平均で97.5円、利益は約40億4800万円になった。


やばいなこれ。

たったの20日間で40億の利益だ、顔のニヤケが止まらない。

株取引で、1月あたり10億儲けて喜んでいたのが遠い過去のように感じる。


決済注文を出した後すぐに、買いの新規注文を出す。

1ユーロ97.8円で18万1398ロット分、証拠金は合計70億9629万円になった。


2月だったか3月あたりに1ユーロ110円を超えていたはずなので、そこまで保有しておく。

3月とかになると、途中で一部を納税のために決済しないといけないかもしれないけど。


「あー、浩介がパソコンで遊んでるー!」


「いや、お金を稼いでるだけで、聖奈と違って遊んでないよ?」

勉強中にノートパソコンを開いて取引していただけだ。


「聖奈はちゃんと勉強してるもん!」


「浩介はこれが仕事みたいなものだからね〜、ほら聖奈は集中してね〜」


「さすが渚はわかってるね」


「でもニヤニヤしてたよー?」

さすがに顔に出ていたか、聖奈に見られていたようだ。


「ちょっと儲けがおっきくてね、俺ももう勉強に戻るから」


「何か甘いものでも食べる?」


「聖奈、美咲の作ったお菓子食べたいなー!」


「それは時間かかっちゃうからまた今度ねー!普通のお菓子持ってくるから!」


「試験まであと半月の我慢だからね」

聖奈、そんな顔をしてもダメだぞ?

不服そうな聖奈をスルーして勉強に戻る。





2月4日、試験当日


いよいよだ、この受験というものは何度受けても緊張する。前世も合わせて4度目なんだけどな。

センター試験を利用して受験する場合、試験科目は国語と英語と世界史の3科目だけで済むのが楽だ。


一緒に来ていた美咲や聖奈、杏奈達とも別れて、教室に入る。

幸い渚とは同じ教室で、美咲や聖奈達は別の学部なので違う教室だ。

ちなみに美咲は文学部、聖奈と杏奈は教育学部を受けている。


「さすがに緊張するね〜」

センターでは余裕な様子だった渚も少し顔色が悪く見える。


「渚ならこのレベルの大学は余裕でしょ?」


「ん〜、まあそうだと思うんだけどね〜」

美咲や渚はA判定以外見たことないし、東京とかにあるレベルの高い大学でも受かるはずだ。


「ハグしてあげよっか?緊張も解けるかもよ?」

冗談を言って和ませよう。


「うん、おねが〜い」

おっと、さすがにこの場では断ると思ったが、そうでもなかったか。

周りからのヘイトを買いそうだ、試験会場でイチャイチャしてるカップルを見て、調子を崩してくれるとありがたいんだけどな。


「ふ〜、ちょっと落ち着いた〜、ありがと〜!」


「渚なら大丈夫!安心して受けなよ」

むしろ俺の方がやばい気もしなくもないが、まあなんとかなるだろう。


「うん!浩介も頑張ってね〜!」



試験が終わり、センター試験と同じくみんなで帰宅する。


「終わったね!」

「人生で一番開放感あるよ〜!」

「これで自由だねー!」


「あとは結果を待つだけだね」


あと一つ予備で受験する大学もあるが、志望大学はここだし試験もうまくいった・・・はず。

ひとまず、大事なところは終わった。


「みんな受かってるといいね!」


「ね〜!」


「どっか遊びに行こうよー!」


「明後日の試験も終わったらね」


「でもそっちは受かっても行かないでしょー?」


「一応ね、そこまで頑張ったらご褒美あげるよ」


「ほんとー?じゃー頑張るー!」


「浩介は聖奈に甘すぎじゃない?もっとビシバシいかないと〜」


「聖奈は褒めて伸びる子だからね」

あと餌が目の前にあるとすぐ釣られる、魚だったら長く生きられなさそうだ。


「そう!褒めて伸びるんだよー!だからもっと褒めてー!」


「はいはい、聖奈はいい子だね〜」

渚も聖奈には結構甘いよな。頭を撫でて可愛がっている。


FXも順調だし、受験もなんとかなった。

卒業旅行の予約も済んでいるし、免許合宿の予約もできている。

あとは、家が完成したら引っ越し作業が大変だな。


春休みが待ち遠しい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レバレッジ→「てこの力」を意味し、担保として預けた証拠金以上の金額を取引できる。日本の場合は25倍まで。

ちなみに、1ユーロ100円から101円になると円安、99円になると円高になります。

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