第70話 告白
今年の文化祭は受験も近いということもあって、クラスで何かをやるということもない。
ただ、他の学年の出し物を見て廻るくらいだ。
「8人で歩くと邪魔になっちゃうし、教室とかに入れないかもだから、2人ずつにしよっか!」
「そうだね〜、時間で交代ね〜!」
「おっけー、じゃあまずどうしようか?」
「じゃー浩介、聖奈と一緒にいこー?」
「私は渚と行くね!時間になったらここに集合ね!」
最初は聖奈と一緒に行動することになった。
こうやってスムーズに決められるのはいいなあ、ほんとに良い子達だ。
「勉強は進んでる?」
「うん!この前の模試も初めてA判定になったしねー!大丈夫だよー!」
「聖奈すごいよね、春にはC判定とかだったのに。聖奈の頑張りはすごいよ!」
「えへへ、でしょー?受験もよゆーだねー!」
「そうやって油断しちゃダメだよ?」
「分かってるー!あ、そうだ!声優の養成所も良いところ見つけたんだけど、春から通っても良いかなー?家からすぐ行ける所なんだー!」
「お、良いじゃん!応援するよ!」
「聖奈がアニメに出るの楽しみにしててねー!」
「聖奈は声もいいからすぐ出られそうだね!」
「あ、射的があるよー!やろうよー!」
「良いよ〜、また聖奈に何かプレゼントするよ」
「えへへ、なんか昔もそんなことあったねー!」
時間になり集合場所に戻ると、次は渚と行くことになった。
無事、聖奈にプレゼントもできてよかった。
「そろそろお腹すいてきたね〜!」
「なんかご飯になりそうなもの探そっか」
「そうしよ〜!」
「カフェとかやると忙しくて大変だけど、何もないと結構暇だね」
「ね〜、今年もみんなのコスプレ見たかったな〜、特に美咲の!」
「それはそう、家が完成したらコスプレしてパーティーでもしようか」
「あ、それいいね!家だったら露出度とか気にしなくて良いしね〜ふへへ」
「渚ちょっと気持ち悪いぞ」
「なんでよ〜!同士だと思ってたのに〜!浩介もそう思うでしょ〜?」
まあ、確かに少しだけ思った、ほんの少しだけ。
「渚にさ、ちょっと相談があるんだけど」
「どうしたの〜?」
「こんなことを彼女に相談するのもどうかと思うんだけど・・・杏奈に告白しても良いかな?」
「お?ついに?てか杏奈にまだ告白したことなかったの?」
「え?」
「もうとっくにそれくらいしててもおかしくないな〜とは思ってた〜」
「マジか」
「私たちも杏奈と由依まではもう諦めてるというか、もう想定してるしね〜。てか、今建ててる家の空き部屋ってそれもあるんでしょ〜?」
「まあ、その、ね? ん?てか私たちってことは美咲とか聖奈も?」
「愛美もね〜、というかその愛美と付き合い始めた時点で部活のメンバー、杏奈とか由依とも付き合うかなってね〜。みんなで話し合ってるから杏奈がいいなら大丈夫だよ〜」
マジか、なんというか彼女達には想定通りの行動な訳か。
クズなのは自覚してるけど、単純にありがたい。寛容な彼女たちで助かる。
というか、由依ちゃんまではいいのか。そうか、いいことを聞いた。
「ありがとう、許してくれて」
「でも、それ以上は増やさないでね〜?このままだと無尽蔵に増えそうだし?」
「いや、それ以上に増やすつもりはないから大丈夫だよ」
今のところは。もしも大学とかでいい出会いがあればわからないけど、多分大丈夫だ。
「ふ〜ん?そっか〜、まあ杏奈がどう返事するかわからないけど、頑張れ〜!」
「ありがとう」
「そろそろ時間だね〜、美咲も納得してるはずだけど、一応話しておきなよ〜?」
「りょうかい」
次は美咲と一緒に廻る番だ。
渚はああ言っていたけど、少し緊張してきた。
「愛美のとこにはもう行った?行ってないなら行こうよ!」
「いいね、まだ行ってないから行こう」
「いらっしゃいませー!あ、先輩!来てくれたんだー!」
「もちろん!席空いてる?」
愛美は今年も喫茶店をやっていて、メイド服を着ている。
「大丈夫!こちらにどうぞー!メニューはこちらです!」
愛美の敬語も珍しくていいな。
「じゃあ、紅茶とお菓子を2つずつもらおっか!浩介もそれでいい?」
「うん、それでいいよ」
「はーい、ありがとうございます!」
「それで?なんか悩み事でもあるのー?」
「あれ、なんか変だった?」
「んー、なんかちょっとそんな気がしたから!なんでも相談してね?」
「あのね、さっき渚にも話したんだけど、杏奈に告白しようと思って」
「あーね、そのことか〜!応援してる!」
「美咲はいいの?」
「渚に話したんだったらもう聞いたんでしょ?大丈夫だよ!」
「ご注文の紅茶とお菓子お持ちしました!」
そう言って、愛美は自分の分も机に置いて席に座った。
「愛美は座ってて大丈夫なの?」
「うん!先輩が来てるって言ったら少しなら大丈夫だって!それでなんの話してたの?」
「そっか、えっとね・・・」
愛美にもさっきと同じく説明した。
「あ〜、私のことは捨てない?」
「当たり前でしょ?愛美のことも好きだから」
「ならいいよ!杏奈先輩も憧れの先輩だし!」
いい子だな〜。
「今日この後告白するの?」
「前夜祭の時にしようかなって考えてる」
「りょうかい!じゃあみんなにも言っておくね!」
これで、ほとんど準備は整ったな、聖奈には伝えていなかったから、この後言っておこう。
杏奈は受け入れてくれるかな・・・前に彼女がいっぱいいるのは嫌みたいなこと言っていたけど。
まあ、当たって砕けろだな。
「先輩、今日は忙しいけど、明日は自由時間いっぱいあるから一緒に遊んでね?」
「おっけー、楽しみにしてる」
愛美の教室を出るともう夕方、前夜祭の時間だ。
集合場所に行くと、聖奈を少し離れた場所に連れて行き、杏奈のことを話ておいた。
「杏奈一緒にいこ?」
「うん、いいよ。あれ、みんなどうしたの?」
杏奈を誘うと、みんなは示し合わせたように先に行ってしまった。
ありがたいな。
「ちょっと杏奈と話したいことがあってさ」
「うん」
「俺、杏奈のこといつもすごいなって思ってるんだよね」
「急にどうしたの?」
「杏奈ってさ、体育祭の時も運動苦手なのに人一倍頑張っててさ、勉強もいつもすごいし、モデルとの両立もできてるでしょ、だからすごいなって」
「そんなことないよ」
「いや、そうだよ。だから、杏奈のこと凄く尊敬してる。それに一緒にいて落ち着くし、時々見せてくれる笑顔が好きなんだ。可愛くてずっと見てたいなって思うんだよね」
「うん」
「だから・・・俺と付き合ってくれませんか」
「ありがとう。でも私「分かってる」」
あ、これ断られるやつだ。杏奈の言葉を遮って、話をする。
「分かってる、他にも彼女がいるのは嫌なんだよね?そのことは知ってるけど、杏奈のことも好きなんだ、諦められなかった」
「・・・そう、だね。こうすけのことは好きだし、美咲達のことも友達として好き。でもいっぱい彼女がいるのってどんな感じなのかわかんなくて、だからごめんね。・・・多分こうすけが誰とも付き合ってなかったら、すぐに受けてたと思う」
そうだろうなあ、どちらかというと美咲達がイレギュラーなだけだよな。
「そっか、ありがとう。でも俺は杏奈のことも好きだから。また告白するから。杏奈のこと諦められないし、一緒にいたいから」
「分かった。断っちゃったけど、やっぱり私もちょっと考えてみるね」
「ありがとう」
今はその考えるっていう言葉が聞けただけでもよかった。
杏奈のことは諦めたくない、少し間を開けてからまた告白しよう、何度でも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます