第31話 初めての

7月末、今年も短い夏休みに入る。


夏休みの予定で一番楽しみなのは旅行だ。

去年と違い、今年はみんなの両親の了解を取り、3人でのネズミーランド旅行になる。


美咲と渚の両親は最初は少し渋っていたが、小6からもう2年の付き合いがあり、ある程度信頼してもらっているのか、最終的にはオッケーをもらえた。


中学生だけで旅行できるのか疑問に思うかもしれないが、ネズミー公式ホテルは親の同意書を提出すれば、宿泊することができる。


「わー!始めてここ泊まるー!」


「すごーい!」

美咲も渚も目をキラキラさせて周りを見ている。


「このホテルにしてよかったね!」


「あれ?受付こっちじゃないの?」


「いいのいいの、こっちきて!」


美咲が不思議そうにしているが、そのままエレベーターに乗り、5階に上る。


今回、初めて3人だけの旅行なので奮発してスイートをとった。1番いい部屋は人気で予約が取れなかったので、その次にいい部屋だ。スイートに宿泊する人だけがロビーではなく5階のラウンジでチェックインができる仕様になっている。1泊26万となかなかいい値段するが、部屋はリビングと寝室に分かれてかなり広く、園内を見渡すこともできる。


今回は2泊3日の旅行なので宿泊費だけで銀行口座に入っているお金の半分が消えた。


「え、スイート!?」


「え!すごーい!広いねー、奥に部屋があるよー!?」


「いい部屋でしょ?」


「でもここ高いんじゃないの?こうすけ、お金どうしたの??」


「それは、前に話した投資で儲けまして」


「さっすがこうすけ、やるねー!」


「美咲も気にしないで、楽しもう!」


「うん!わかったー!」

今日というか、今回の旅行では目標がある。


そろそろ、次のステージに進みたい。クラスが分かれたりして、一緒にいる時間が減った分俺としても少しだけ不安はある。2年も待ったし、彼女達も成長してきたし、ここでより深い中になった方がいいと判断した。拒否されたら怖いが、最近の様子を見ている分には大丈夫・・・だと思う。ちゃんと必要なものも持ってきている。


「とりあえず、荷物置いて入園しよっか!」


「「りょうかーい!」」


「タワーオブテーラー乗りたい!まだ乗ったことないから!」

美咲の言ったタワーオブテーラーとは仕立て屋を題材にしたフリーフォール型アトラクションだ。


去年できたばかりのアトラクションだが、前回はネズミーランドの方にしか行ってないから、まだ乗れていなかった。


「いーねー、でも美咲乗れるー?」


「大丈夫だよー!」


すごい人だかりで1時間ほど並んでようやく乗れた。これでもまだ前世に比べれば少ない方だ、ここは毎年のように入場者が増えてるからな。


「うぅぅ・・・怖かった〜!渚〜こうすけ〜!」


美咲は乗る前はあんなに強気だったのに出てくるなりこの有様だ。


「よしよし、次はもっと楽しいやつ乗ろうな!」

2人で頭を撫でてやり、次に向かう。


いくつかのアトラクションに乗り、ランチを食べ、ショーを鑑賞した。


「ちょっとお手洗いに行ってくるねー!」

といい、美咲はトイレに行くと渚が話しかけてきた。


「こうすけ、3人で付き合ってるんだからね、私も一緒だよ?私も美咲のこと見てたいし・・・わかった?」


「わかってる」

渚は察していたようだが、拒否はしないみたいだ。というか、好奇心の方が上回っているようだ。


「最後はこのアクアトピカってやつのろっか、夜は綺麗みたいだよ!」


「うん!乗る!」


「びしょびしょになったねー!」


このアトラクションは夏になるとびしょ濡れコースと普通のコースの2つに分かれる。それとなく濡れる方に誘導したら思った以上にずぶ濡れになった。


「ホテル戻ろっかー」


「うん、着替えないとねー!」


ホテルに戻り、シャワーを浴びて寝た。







次の日


「おはよ、浩介!」


「ふふ、美咲も浩介もおはよー!いい朝だねー!美咲可愛いねー!」


美咲は少し照れながら朝の挨拶をする。渚は頬を赤くしながらもテンションが高かった。


なぜ美咲が照れて、渚のテンションが高いかはわからない。誰にもわからない。大事なことなので2回(ry


まあ、うまく行ってよかった。久しぶりなので少し緊張した。


「おはよ、2人とも可愛いよ」


「えへへ、ありがと!」


「知ってるー!でも、ありがとー!」

朝食を食べに行くのが面倒なので、ルームサービスを頼んで食べた。


「今日はほーするのー?」


「渚、ご飯を口に入れたまま喋らない」


「ほーい」


「今日はどうしよっか、ちょっとゆっくりしてからネズミーランドの方行く?一日ホテルでゆっくりしてもいいよ!」


「んーお昼くらいから行きたいなー!渚はそれでも大丈夫?」


「うん!大丈夫ー!」


家に帰ってから、残りの夏休みは、3人で遊んだり、部活メンバー6人で遊びに行ったりして過ごした。


「浩介宿題やった?」

あ・・・


「渚ごめん見せて・・・」


「しょうがないなー、貸しだからねー!」


渚の貸しは高くつきそうだ・・・


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