第29話 聖奈の悩み事
「ねーこうすけー」
「ん?どうしたの?」
「いや、やっぱなんでもない!」
聖奈は何か悩み事があるようで、最近時々暗い顔をしていた。
「何か相談事なら聞くよ?」
「んー、こうすけって確か妹いるよね?」
「うん。3歳下の妹がいるよ」
「私もちょうど3歳年下の妹がいるんだけどさー、どう接したらいいかわかんないんだ〜」
「え、妹いたの?そんな話初めて聞いた」
「言ってないからねー、うち色々複雑でー・・・去年お母さんが再婚して義理の妹ができたんだ〜」
おおう、結構重いな!?てか、お父さんいなかったのか、知らなかった。
「義理のお父さんもロシア人で、妹も日本育ちだから日本語は通じるんだけど、気が強くてよく喧嘩になっちゃうんだー」
てかお母さん日本人のはずだけどロシア人好きだな!?
「あ〜、どう言う喧嘩するの?」
「たとえば、義父さんと何か話したり、買い物に行った時とかに、義父さんと話すなとか、ずるいとかそんな感じ」
「あー、妹ちゃんも心細いのかも、自分のお父さんが取られたって感じるんじゃないかな?妹ちゃんと話したり、遊びに行ったりして、味方アピールするのがいいんじゃない?」
「あー、なんとなく苦手意識であんまり話したり、遊んだりしてなかったかも〜」
「もう家族になっちゃったんだから、どうにかして仲良くするしかないよね!今度プレゼントでも買いに行ってみる?」
「あ、それいいかも!プレゼント選び付き合ってくれる?」
「もちろん!そろそろ戻ろっか!」
「りょーかい!」
今年も体育祭の季節である。練習中、聖奈に呼ばれて、相談を聞いていた。聖奈の家もなかなかに大変な家庭のようだ。親が再婚して義妹ができる、そのシチュエーションは体験してみたいが実際できてみると大変だろう、同性ならなおさらだ。
「ねー、どこ行ってたのー?由依ちゃんもどっか行っちゃって1人で寂しかったー!」
「ごめんごめん、聖奈の相談聞いてたんだ」
「へ〜・・・なんの相談?なんでこうすけなの?」
「あんまり詳しくはいえないけど、妹に関してだからじゃないかな」
「聖奈妹いたんだー?ふーん、わかった!でも次いなくなる時は言ってよー?」
「そうだね、そうする!ずっと一緒にいるって約束したもんね!」
「別にずっとはいなくてもいいけどねー、ほら練習しよ?」
「寂しいって言ってたくせに」
「もう!そんなことはいいでしょー?」
体育祭当日、今年は渚と二人三脚に出ることになっている。去年みたいに6人集められないからムカデリレーは無理だった。男は入れたくないし。
「美咲ー!がんばれー!」
遠くに走っている美咲がいた。
「いや気持ちはわかるけど、敵チームだぞ?」
「えー、そんなのどうでもいいじゃん!美咲ががんばってるんだから!ほら、こうすけも応援!」
周りからの視線が痛いんだが、しょうがないので美咲を応援する。まあどうせなら美咲に勝って欲しい。
「勝とうね!」
「うん!」
クラスの男子にも人気がある渚との二人三脚、男たちからの嫉妬の目が心地いい。思春期を迎え、かなり女子を意識し始めた中2男子の間では、誰が可愛いとか、誰と付き合いたいとかいう話題が多くなった。
やはり学年での1番人気はスタイルも良く、誰にでも優しい美咲だ。クラスでは渚と聖奈がツートップである。
・・・まあ、美咲と渚はもう俺のだし、聖奈と一番仲がいい男も俺だ、意識し始めるのが遅かったな。
投資でも起業でも、なんでも先に始めたやつが利益を掻っ攫っていく。一番初めにやったやつが偉いし、勝つのだ。それは恋愛でも同じ。一番最初に美咲に告白した俺が勝った。優越感を感じつつ、走る。
「はぁはぁ、勝てたね!」
「はぁはぁ、やっぱ俺たち、相性いいよね!」
「そう、だねー!ずっと一緒にいるもん、ねー!」
息を切らしながら話す。結果は1位だった。身長も同じくらいで長く一緒にいる俺たちは、息も合う。
体育祭の結果は虚しくも4組中3位で、美咲のいる組が1位だった。
「2人とも頑張ってたねー!」
「美咲もね!渚なんか組が違うのに応援し始めてたし」
「こうすけも結局応援してたでしょー?」
体育祭の帰り3人で話しつつ駅から家まで歩く。2人とも人気になってきたし、よそ見しないように引き留めないといけない。何か考えておこう。
「あはは、ありがとう!私も2人のこと応援してたー!でも二人三脚はちょっと嫉妬しちゃった!」
嫉妬してくれて何よりだ。
「そっか、美咲も家でイチャイチャしようね!」
「もー!でもそれなら許してあげる!」
「大丈夫!私は美咲が一番だから!」
「そこは2人とも一番って言ってよ」
「んー、まあこうすけは1.5番くらいかなー?」
渚の中での順位がほんの少し上がっているようだ。前は2番とか言ってたはずだ。
まだ美咲には勝てないけど、1番か、同率1位になるまで頑張らないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます