第21話 悩み

「お兄ちゃんひどいよ〜!もっと優しくして?ねーえー!」



7月末、公立校に比べて短い夏休みが始まる。

今日は妹と、その友達の愛美(あみ)ちゃんとテレビゲームで遊んでいる。

運天堂という会社から発売されていて、様々なキャラクターを使って対戦できる前世でも人気のゲームだ。


そういえば今年の末に運天堂からwooという家庭用ゲーム機が発売される。

確かそのあと株価が急上昇したんだよなあ。投資したいが資金が足りない。


父に言ったらお金貸してくれないかな?・・・いや無理・・・かな?

運天堂に投資しようと思えば、単元株が100株なので今の株価で200万くらい必要になる。

そんなお金を中学生の子供に貸す親なんか多分いない。

値上がりする株がわかっているのに投資できないのはもどかしい・・・


「やったー!お兄さんにかてたー!」

考え事をしていたら手元が疎かになっていたようだ。

愛美ちゃんは妹と同じ小学4年生で、時々うちに遊びにくる。

ちなみにこの子からは愛華のお兄さん、最近では単純にお兄さんと呼ばれている。


「愛美ちゃん強いね!」


「えへへ」


「そういえば愛美ちゃんは最近忙しいの?」

夏休みになり少しうちに来る頻度が減っていた。


「お母さんに塾で勉強しなさいって言われたんだ〜」


「お、頑張ってるんだねー、えらい!」

どこの家も教育熱心なことだ。


「もー!かーてーなーいー!」

妹には手加減しない。


「お兄ちゃんなんだから優しくしてあげなさいよー?」

キッチンから料理を運んできた母から小言を言われる。

悪いことはしていないのに、こういう時何か言われるのは必ず年上の方だ。


ゲームを中断してお昼ご飯を食べる。


「そういえば株は最近どう?」


「順調だよー」

パソコンを買った時に両親には、利益が出ていて扶養から外れることと、税金を払う必要があるということを伝えていた。


「お母さんも始めてみようかな?」


「今はあんまり時期が良くないから、もっと後がいいかも!」

未来を知らない人が株を始めるなら2008年10月以降がいい。

なんせ9月にアレがあるからな。

その後だったら大抵どの会社でも値が上がる。


「そうなの?じゃあまだやめとこっかな?」


「うん、それがいいと思う!」

アレを題材にした映画はいくつもある。


中でも好きだったのはマ○ー・ショートという映画で、サブプライムローン(信用度の低い人向けのローン)の問題点にいち早く気が付き、大金を稼いだ人たちを題材にした映画だ。


俺も映画の主人公のように、いや史実で大儲けした人たちのように稼ぎたい・・・

しかしアレに絡むのは難しい。


まず日本の証券会社から米国株の空売りはできないため、米国の証券会社の口座を開く必要があるが、そもその日本から申請できる証券会社はほとんどない。


しかも、アメリカの場合空売りできるのは21歳以上。

せいぜいできることといったら底値で株を買うことくらいだ。



さらばリーマン・シスターズ・・・ボロ儲けしてる人を横目に眺めることしかできないなんて・・・



「ごちそうさまー!」

昼食を食べ終え、自分の部屋に戻る。


今現在の資産はジッセント株9万株で約420万円と、りんご株550株で440万円、銀行口座にある50万円の計910万円だ。

ジッセント株は6月に半分売った時より少し値下がりしてるが、りんご株は順調だ。

どちらも最長でもサブプライムローン問題が出てくる2007年末あたりには売却する。


逆にいうとそれまで身動きが取りずらい。

あ、忘れていたが今年の分の確定申告をしないといけないので、2月には一部売らなきゃいけない。


株式を売った利益をフルで次の投資に回したいので、源泉徴収なしの口座を選択している。

面倒だが少しでも多く利益を得るためには必要なことだ。


はぁ・・・金が足りない。


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運天堂→任○堂

woo→○ii

リーマン・シスターズ→リー○ン・ブラザーズ

アレ→リーマ○ショック

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