第15話 幕間

世界5分前仮説という有名な仮説がある。


世界は5分前に作られていて、昨日食べた晩御飯の記憶も、1時間前見始めた映画も全て5分前そういう風に作られた。ということを否定できないのだ。





目が覚めると懐かしい天井が見えた。


あたりを見回すと狭くて汚い部屋が見えた。


「あれ?」

ここって27歳(転生前)の時に住んでいたマンションじゃないか。


視線を下げ、自分の体を見る。

あまり外に出ていないと見てわかる、貧弱だが大人の体が見えた。


「夢だったってことか?」

1年もの長い夢なんか見たことも聞いたこともない。

ベットから出て足を床に下ろすと、グシャッとビニール袋が潰れる音がする。


部屋きったな。まじか、なんか臭い匂いが漂ってきそうだ。

積み重なった漫画や、空き缶などのゴミも見える。


まだ寝起きだからか視界も少しぼやけている。


立つと、大人としては決して高くはないが小学生よりははるかに高い視点だ。


「夢かよ〜せっかく美咲とか渚とかとイチャイチャしてたのに〜・・・」

小学生の女の子とイチャイチャする夢を見るとはなかなか溜まっていたようだ。


スマホを開き日付を見ると、2021年4月4日になっていた。


「やけに現実的な夢だったなあ」

パソコンを開きFXのチャートを開く。


「お、上がってんじゃんラッキー!」

買っていた新興国通貨を決済し利確する。


小遣い程度の金額だが遊びに行くくらいは稼げた、明日にでもどこか行くか。

大学を中退して以降出会いもなく彼女と別れて久しい。


「更新されてっかなあ」

起きてまずネット小説サイトを開き、いつも読んでいる小説の更新をチェックする。


「まだ来てないか〜」

サイトを閉じ、開きっぱなしになっているヨーチューブとネコネコ動画に目を移す。


再生途中になっていた動画を見ながらタバコに火をつける。


ふ〜


うまい。昨日も吸っていたはずなのになぜか久しぶりに感じる。


27歳にもなって仕事もせず、親からの仕送りでの一人暮らし。


「腹も減ったし宅配でも頼むか」

お腹が満たされて思う、


働かずに食う飯ほどうまいものはない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・夢か」

目が覚めると見慣れた天井だった。

体を見ても小学生のままである。

頬をつねってみる。


「イタッ!」

こっちが現実ってことだよな・・・?


今認識している現実が本物なのか自信がない。


もしかしたら今も夢を見ているのかもしれない。

目が覚めたら27に戻ってるかもしれないし、それもまた夢なのかもしれない。



ま、そんなことを考えてもどうしようもないんだけどな。

今認識できるのは転生前の夢を見ていた、それだけだ。

そしてこの小学生の体の俺が現実だ。少なくとも今は。


どうせ今ある人生を全うするしか無いのだ。


改めて思うが転生前は自分でも自覚するほどのクズだった、悪いとは思っていなかったが。


まあ、今度はあのようにはなりたくない。


正確にいうと、もっと快適に、もっと自由に、もっと満たされるようになりたい。


この現世でも働く気はない。そのための投資だ。絶対に失敗しないようにしないと。




日付を確認すると中学校の入学の前日だった。


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