第7話
半年後あっさりと私とマケール様の婚約は成立した。
彼からは絶対に逃げられないと私が諦めたのだ。
そして私は久しぶりにモーリスに会う事になった。
向こうがどうしても会いたいと言ってきたからだ。
最初は会う気はなかったが最後にちゃんと挨拶するくらいなら良いかもしれないと了承したのだ。立会人として婚約者となったマケール様もついて来る。
「さぁ、最後の挨拶に行きましょうか」
王城に向かうとマケール様が待っていた。
「愛しのエリーズ」
両手を広げて待ち構えるマケール様に苦笑いしか出てこない。
周りにいた使用人達を見ると全員が顔を逸らしてこちらを見ないようにしていた。まるで私達の事はお気になさらずにどうぞと言われているような気分になる。
「エリーズ、おいで」
「嫌ですわ」
「どうして?」
「恥ずかしいからに決まってるじゃないですか!」
怒鳴るように言えばマケール様は満面の笑みになる。
拒否されているのに笑顔ってマケール様は苛められるのが好きなのでしょうか。てっきり苛めるのが好きな人なのかと思っていたのですけど。
「恥ずかしがっているエリーズも可愛いね」
やっぱり苛めるのが好きな人ですわ。
拒否したというのに勝手に抱き着いてくるマケール様から逃げようとするが男女の力の差というのは悲しいもので逃してもらえない。
「離してください!」
「もうちょっとだけ…」
「今日はモーリスと話をする為に来たのです」
彼はもう王族ではないので様を付ける必要はありません。
私がモーリスの名前を出した途端マケール様の表情が恐ろしいものに変わる。
「あいつの為に来たの?」
「お別れを言いに来ただけです」
「私の為には会いに来てくれないの?」
「ほぼ毎日来てるじゃないですか」
王子妃教育と王太子妃教育では似ている点もあれば違う点もある。
その為、毎日のように王城に足を運んでいるのだ。
「それは王太子妃教育の為に来てるんだろう?」
「ええ。貴方の妃になる為の教育に来ているのです。つまり貴方の為に来ているのですよ」
「私の妃になる…。良い響きだね。定期的に言ってくれないかな?」
「嫌ですわ、恥ずかしい」
再び「恥ずかしがってるエリーズ可愛い」と抱き着いて来ようとするマケール様を今度は避ける。
馬鹿な恋人のように見えるのでやめてほしいですわ。
「そろそろモーリスに挨拶に行きたいのですけど」
「もう会わなくて良くないか?」
「血を分けた弟でしょうに」
「戸籍上は弟じゃないけどね」
私もモーリスの事は嫌いですけど、マケール様のモーリス嫌いもなかなかですわね。
散々迷惑をかけられてきたのですから当たり前と言えば当たり前ですけどね。
そんな事を思いながら私とマケール様はモーリスのいる部屋に向かった。
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