幕間2※モーリス視点

エズメの発言に私も固まった。

母上は厳しい人だが弱者を苛めるなど愚かな真似はしない。


「え、エズメ…」

「モーリス様!王妃様、酷いですよね!」


同意を求めるように見上げてくるエズメに私はどうしたら良いのか分からない。

母上は愉快に笑い始めた。


「モーリス。貴方そんな子に懸想していたの?」

「そ、それは…」

「もう良いわ。不愉快だからさっさと部屋を出ていって頂戴」


手を振って出て行くように言う母上。

今ならまだ間に合うかもしれないとエズメを連れ出そうとするが手遅れだった。


「また苛めてきます!陛下、こんな人とは別れた方が良いですよ!」


場の空気が固まった。

部屋の端にいたメイド達が逃げるように去って行く。

母上は目を細め、兄上は呆れたように溜め息を吐き。

そして父上は。


「ただの小娘の分際でふざけた事を言うな」


鬼の形相で低い声を出した。

ああ、終わった。

そう思った。父上の怒りを感じ取ったのかエズメは私の腕に縋り付いてくるが正直な話をするなら彼女を振り払って逃げたい。

父上は母上を心の底から愛している。側妃や妾を取らないほど深く愛しているのだ。それは二人の子供である私が一番よく分かってる。

だからこそ母上のことを悪く言われた事に激怒しているのだろう。


「わ、私は…」

「言葉を発するな、不愉快だ」


まだなにか言おうとしていたエズメの言葉を遮り、睨み付ける。


「公爵令嬢であるエリーズを嘘で貶めようとした挙句、国母である我が妃を愚弄するとは…。貴様は神にでもなったつもりか?」


エリーズを嘘で貶めようとした?

どういう事だ。


「こちらで調査したけどエリーズがその子を苛めていた事実はないわ」


母上が補足してくれた。

嘘だろ、エリーズはなにもしていなかったのか。

呆然とする私の隣ではエズメが顔を真っ青にしていた。


「公爵家を、王家を舐めておるのか、貴様は」

「そ、そんな…」

「言葉を発するなと言ったはずだ。そんな事すら出来ないのか!」


怒鳴られたエズメは立っているのもやっとという状態になる。


「二度と私達の前に姿を現すな!」


ふらりとするエズメを咄嗟に支える。


「モーリス。今回の事は許せるものじゃないぞ。お前がその娘をここに連れて来なければ良かったのだからな」

「は、はい…」

「その娘を今すぐ城から追い出せ!その後は部屋で待機していろ!お前に対する処罰は追って伝えさせる」


そう言われて部屋から出ようとする。しかし愚かなエズメはどういうわけか兄上に縋ろうとした。


「お、王太子殿下様!助けてください!」

「エリーズを傷つけた君を私が助けるわけないだろ」


冷たく見下ろす兄上は汚物を見るような表情をした。


「モーリス、さっさと連れて行け。目障りだ」

「は、はい…」


騒ごうとするエズメの口を塞いで部屋を出て行った。


そして一週間後、私の除籍が発表されたのだった。

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