第81話 ジル・デスペルト

「無理だよ」


丹歌がいう。


「なにが無理なんだ?」


ジルが苛立ちながら言葉を放つ。


「その子はもう君の武器じゃない」


「なにを言って……」


ジルがプレゲトンの方を見る。


「そういうことね」


プレゲトンがジルの手元にはもうなかった。

代わりにジルの背後に一人の少女が立っている。


「お前……誰にモノを言っているんだ?」


ジルがその少女にいう。


「貴方こそなんのつもり?」


「お前は俺が抱いたんだ。

 つまりお前の所有者は俺だ」


「違うわ。私の所有権はもう貴方にはない。

 薬と脅迫で女を抱いても抱いたうちに入らないのよ坊や」


少女の名前はプレゲトン。

伝説の三剣のひとつ。


「クソが!お前なんかいなくても俺は!!」


ジルがそういうと刀を召喚した。


「もうやめろ」


ジャキがいう。


「やめないね」


ジルが答える。


「やめておけ」


するとその声がその場に響く。


「貴方は……デスペル・デスペルト!」


丹歌が驚くのも無理はなかった。


なぜならデスペル・ジルベルトとは傭兵ギルドダークグラムのギルド長でありジルの父でもある男。

世界に存在するヒーローの中でも指折りの実力者ともいわれている。


「ジル。今日は帰るぞ」


「親父!俺はコイツらを殺すまでこの怒りが収まらねぇ!」


「納めろ。お前はプレゲトンを失った。

 その時点で、亜金……いや丹歌には勝てない」


デスペルがそういうとジルは舌を打った。


「クソが。覚えてろよ!

 お前ら必ず俺が殺してやる!」


ジルはそう言い残すと空間を歪めその中に入った。

ワープ、それはジルの能力の一つだ。


「ジャキ、お前は本当にそれでいいのか?」


「すみません。

 俺はジルにはもうついていけません」


ジャキが謝る。


「いや、謝ることはない。

 お前はお前の信じる道を行け」


デスペルはそう言い残すとその場を去った。

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