第17話 芸術が爆発

 ヒーローがひとりまたひとりと吹き飛ばされていく。

 ヒーローに触れなくてもいい。

 地面に触れれば地面が吹き飛ぶ。

 単純な話だった。


 優は、自分の力に酔いしれていた。


「ははははは!

 ヒーローが!こんなに簡単に倒せるよ!

 ヒーローなんていらないよね!

 僕を助けてくれなかったヒーローなんて!

 いらない!いらないんだ!

 芸術が爆発するんじゃない。

 爆発こそが芸術なんだ!!」


 嬉しそうに笑う優。

 全てを手に入れた気になっていた。

 お金がなくても奪えばいい。

 性欲を満たしたければ強姦すればいい。

 逆らうものは皆殺し。

 今まで自分が奪われたお金。

 そして、傷付けられた心と体。

 優はそれを奪い返すように他人を傷つけていった。


「さぁ!

 君たちが正しいのなら僕に勝ってみせなよ!

 勝った人が正義なんでしょ?

 だったら僕が正義だ!

 これからは、お金も女の人ももみんなみんな僕が独り占めするんだ!」


 優は、そう言って地面を踏む。

 すると色んな場所から火柱があがる。


 優はあたりを見渡す。

 満たされない欲求。

 それをぶつける相手を探す。

 するとひとりの女子高生を見つけた。

 黒髪でショートカット。

 可愛らしい顔立ちをし胸も大きかった。


「あは!君に決めたよ!」


 優は、そう言ってその女子高生に近づく。


「え?あ……」


 女子高生は、腰を抜かしているため動けない。

 恐怖で動けない。


「君で僕は初体験を済ませるよ。

 そして、君が性処理機第一号だ!

 君だけじゃない!

 この世の全ての女は僕の性処理機になるんだ!

 君は誇っていいよ!その素晴らしい第一号になるんだか――」


 優が、そこまで言いかけたとき頭に石ころが投げられる。


「ん?」


 優は、石が飛んできた方に視線を向けた。


「はぁ。

 これだから子どもは……」


 セロだった。

 セロがため息混じりにそう言った。


「なんだよ!

 お前だって子どもだろ!」


 優がそう言ってセロを睨む。


「……そうだな。

 僕もまだまだ子どもだ」


「まぁ、どっちでもいいよ。

 僕に逆らった君は死ぬんだ!

 後悔しても遅いよ!」


 優はそう言って地面を踏んだ。

 しかし、何も起きない。


「相性が悪かったね」


「お前、何をしたんだ?」


 優がそう言ってもう一度地面を踏む。

 しかし何も起きない。


「僕は僕の能力で、空気密度を調整して酸素を消したんだ。

 便利でしょ?僕の螺子の能力は……」


「螺子?」


 セロの言葉に優は理解できないでいた。

 それどころかパニックになっている。


「……まぁ、わかんないよね」


「さっさともとに戻せ!」


 優が何度も地面を踏んだ。

 しかし、なにも起こらない。

 セロは、ゆっくりと指を鳴らした。

 すると優は静かに苦しみだす。


「君の周りの酸素も奪うね。

 これがいちばん手っ取り早いからね……」


 セロは、そう言って小さく息を吐いた。

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