封印少女
世界の終りの地。
見渡す限り灰色の荒野。
生物らしき影など一切なく、乾いた土壌には草木の一本も見当たらない。
無人の大砂漠でさえ観察すればわずかながら生物はいるし、草木も生えている。探せばオアシスも見つかるだろう。
だが、この地はどうだ。
天井は常に薄暗い雲に覆われていて、大地には一切の生物の気配がない。ただ延々と
「...............」
神秘的な少女だった。
真夜中を想わせる曇天の元自然と輝く銀髪に、どんな大海よりも深く鮮やかな色味を帯びた
そして、その一糸まとわぬ華奢な裸身もそう。
生まれたての赤子のようにきめ細かい肌ながら、まるで透けるような白磁色の肌。華奢でありながら手足はすらりと伸びて、さらに年頃の少女らしい丸みも感じられる。
見た目の年齢は十五か十六。
けれどそんな外見はまるで意味がないと言わんばかりに、少女がたたえる印象は圧倒的に気高く、そして神々しかった。
「ここは....?」
吹きすさぶ風に舞う横髪を手で押さえる少女。
頭上を覆う雲。
素足に触れた冷たく乾いた大地、そしてどこまでも続く灰色の地平線。
自分の周囲をぼんやり眺めていた彼女が、唐突に――
「.......くしゅんっ!」
かわいい声でくしゃみをした。
「寒っ!?足冷たいし風強いしっ!っていうか一体全体どういうことだ。なんで私は裸でこんな場所に立っている?.......いや待て、落ち着いて思い出せ」
華奢な裸身を荒野に晒したまま腕組する少女。
が、落ち着いて考えようにも周囲に吹きすさぶ風鳴りがあまりに強く、そして冷たく肌の温度を奪っていって―――
「うるさいだまれ」
直後、ぴたりと風がやんだ。
少女が発した一言で。暴風さながらに渦巻く旋風が、まるで少女に恐れをなしたかのように鎮まったのだ。
一方で、少女のほうはそれに驚いた素振りはない。
それが当然だと。自分の一喝で暴風が収まったことなど当然という様子で後ろ髪を手で
艶やかな唇からため息が漏れた。
「あの戦いで.......ええと、そうか、わたし.......封印を.......」
そうつぶやいたきり、しばし天井を見上げたままの少女。
だが―――
「そういえば.......メルトラインと約束が.......」
その愛らしげな顔が、なぜか興奮したように次第に赤くなっていく。
握りしめた華奢な拳すらフルフルと震わせて。
最後に
「メルトラインめ.......な.......なぁにがすぐに封印から助けてやるだ」
少女は、空に向かって声の限り絶叫した。
「あれから三百年たっても助けに来ないから、結局わたしが自力で脱出する羽目になったじゃないか、あの大噓つきぃぃぃぃっぃっっっっっっ!!」
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