天空の恋人

amalfi

第1話 幽玄ビル


「このビルって超高層だけど結構築年数は古いですよね。でも外を見るとまさに摩天楼って感じだなあ。東京の街が一望できる。もともと高所恐怖症だったんで、ここに就職したんで友人たちがびっくりしているんですよ」


美大の造形科を卒業しアミューズメント向け展示物を製作する会社に就職した奏一馬は、都会の中心にある41階建てのyougenビルの34階にある(株)アクト社に出勤していた。彼の仕事は恐竜や動物などの原型を作ることだった。


「地震が来ると揺れるぞ」

先輩格の有住が脅かす。


「まさか、こんなビルの中にステラノザウルス作っている会社があるなんて思いませんでしたよ」


「このビルが建つ前はこの場所がこのアクト社の工場があったそうだ。いわゆる等価交換方式ってやつだったらしい。そもそもこの辺はもともとは城跡だったそうなんだよ。それで最上階は最初、天守閣をイメージして建築されたらしいけどね」


「へえ、僕、城好きなんすよ。見てみたいなあ。入れるんですか、そこ。」


「やめとけー。俺も行ったことないっていうか誰も行ったことないんだ。出るって噂だから」

「出るって何が。」

有住は間を取って大げさに耳元で言った。

「幽霊だよ。300歳のお姫様が。」


「えー!それは・・・都市伝説じゃないんですか。」


「かもな。でもやめとけ。俺は足のないものは苦手だ」

「見てみたいなー」

「高いところが苦手なくせに、お化けは怖くないってか(笑)」

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