貴方の秘密が知りたい③
―――あ、マズい行っちゃう!
考えているうちに蒼が猫の元を離れてしまっていた。 慌てて後を追いかけようと思ったが、捨て猫のことが気になり過ぎて餌を食べている猫の前まで走り寄った。
「よしよーし。 私はちょっとお金を持っていないんだけど、美味しい餌をもらえてよかったね。 いい飼い主さんが見つかるといいね」
その場にしゃがみ猫の頭を撫でる。 猫は気持ちよさそうにしていた。
―――よし、行くか!
蒼の行った方向を見れば、小さくなってしまったがまだ背中は見えている。 気合を入れ直し尾行を続行した。
―――知れば知る程謎になる存在!
―――ドラマの展開だとここで何かしらの事件が起きるはず!
莉子がそんな風に考えたことがフラグになったのか、静かに後を付けているうちに本当に汚い男の声が聞こえてきた。
「おいおいおいー。 金を出せって言ってんだよ!」
どうやらゲームセンターの駐車場でカツアゲをしているという構図のようだ。
―――きたきたきたー!
―――・・・と言いたいところだけど、流石にリアルでこれはマズいのでは・・・?
蒼もその声に気付いたようで莉子と同様そちらを注視している。
「も、持っていません、そんな、お金なんて・・・」
「バイトしてなくても小遣いくらいは普通持ってんだろうが! 早く出せ!!」
身体の小さな中学生の男子二人組が大きな一人の不良、おそらくは高校生くらいだろうに絡まれている。
「わわわッ! 見ている場合じゃないじゃん!」
大声を出そうか迷ったが、自分は女で手を出されたら確実に負ける。 そう思い急いで携帯を取り出した。
―――警察に連絡をしようか。
―――それとも近くの交番まで走る?
―――あぁもう、こういう時は咄嗟の判断が必要なのに!
そう考えていた時には既に蒼は行動に移していた。 躊躇うことなく不良のもとへと近付いていく。
―――えぇ、蒼くん!?
―――嘘、一人で大丈夫なの!?
蒼は背は高いが普通の男子高校生だ。 喧嘩慣れしているだろう不良に勝てるはずがないと思っていた。 だがその偏見は外れることになる。
「ぐはぁッ」
遠目で見ていたためよく分からないが、蒼が不良の腹に向かって思い切り拳を叩き付けたようだ。 怯んだ隙に中学生二人組を先に逃がしていた。
―――うわぁ、カッコ良・・・。
―――じゃなくて!
―――あの不良はどうする気?
恐らくは不意打ちが功を奏したのだろう。 不良は気を失ったのか倒れたまま動かない。
―――大丈夫、なのかな・・・?
少々乱暴な気もするが、完全な自業自得でそうしなければ今頃中学生二人も蒼も無事だったかどうか分からない。 だが起き上がればまた問題が起こるのが目に見えている。
蒼もそう思ったのかこの場から離れようとした。 その瞬間、彼の頬にかすり傷が見えた。 おそらく殴る時に犯人の爪が当たったのだろう。
「蒼くん! その怪我大丈夫!?」
思わず声を出し名前を呼んでしまった。
「ッ・・・」
隠れて尾行していたため、莉子がいることを知るわけがない。 そのためかカツアゲを見つけた時の数倍の勢いで驚き、そのまま猛スピードで走って逃げてしまった。
―――えぇ!?
―――急にどうして!?
―――私だと気付いちゃった?
そこで疑問を抱いた。
―――男子たちを普通に助けていたし、単に女子が苦手なだけなのかな?
―――それにしては学校では男子とも絡んでいない気がするけど・・・。
―――でも仮に女子だけが苦手だとしても、動物を乱暴に扱う姿はなぁ・・・。
―――ん?
莉子は不良のいる近くに落ちているあるモノを発見した。 それには見覚えがあったため不良に気付かれないようゆっくりと近付いていく。
―――・・・あ、蒼くんの生徒手帳だ!
同じ学校に通っているため、当然莉子が持っている生徒手帳と同じものだ。 表には顔写真が付いているためハッキリと分かる。
―――蒼くんが不良と戦っている時に、落ちちゃったのかな。
落としたなら返してあげる必要があると思い、生徒手帳に手を伸ばした。
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