第35話 ギガントグリズリー(複数)討伐戦(中)

「まずは数を減らさせてもらうぞ! ハァッ!」


 俺はギガントグリズリーの中で、パワーアップしていないAランクの個体を狙って攻撃を仕掛けた。


 勇者パワーが籠められた『破邪の聖剣』がきらめき、Aランク・ギガントグリズリーをまずは2体、矢継ぎ早に斬り倒す。

 SSSランクの俺の攻撃を、Aランクの魔獣程度では受けきれはしない。


「次だ!」

 さらに間髪入れず前方に駆け出した俺は、すれ違いざまの一閃でさらにもう1体を斬り倒した。


 もちろんAランク・ギガントグリズリーも爪や牙で応戦してくるものの、


「たかがAランクの魔獣の攻撃が、俺に当たるかよ!」


 俺はそれらを危なげなく回避し、同時に鋭い反撃で斬り返してさらに1体、さらにもう1体のAランク・ギガントグリズリーを撃破する。


 俺はそのまま縦横無尽に『破邪の聖剣』を振るって、Aランク・ギガントグリズリーを数を次々と減らしていった。


 そうして俺はまず11体のAランク・ギガントグリズリーを簡単に葬り去った。


「すごい、11体もの上位魔獣をこうも簡単に倒してしまうとは……!」

「一太刀一太刀がまさに必殺の一撃だ……!」

「次元が違う……!」

「これが魔王を討伐した勇者の力なのか……!」


 俺の圧倒的な戦闘力を見て、後方で固まって守備陣形を構えていた騎士たちが大きくどよめいた。


 まぁAランクを圧倒するのは、グレートタイガーを全滅させたときと同じで格が違いすぎるから楽勝なんだけどな。


 問題は残る4体、SSランクにパワーアップしたギガントグリズリーたちだった。


 SSランクといえば魔王の四天王と同格クラスだ。

 もちろん同じランクであってもその中で上下の差異はあるわけで、実際は魔王の四天王と同じほどに強いということはないだろう。


 しかしそうであってもSSランクの超高位魔獣は厄介な相手だ。

 それを同時に4体も相手にするのだから、俺にもそれ相応の覚悟が必要だった。


 信頼できる勇者パーティの仲間たちがいれば取れる作戦もあるんだろうけど、今は俺一人だしな。


 SSランク・ギガントグリズリーが次々と襲いかかってくる。

 それを受け止め、かわし、はね返す。

 隙を見て俺も反撃を試みるも、前に戦った時と同様に、硬い剛毛に弾かれて俺の攻撃はまったく通らなかった。


「攻撃力もさることながら、やっぱ一番厄介なのはあの金属みたいな剛毛に守られた防御力だな……!」


 なにせ1本1本が金属でできたような毛が、無数に集まって全身をくまなく覆っているのだから。


 SSランク・ギガントグリズリーたちは俺の攻撃が通らないと確信したのか、防御を半ば捨てて攻撃一本鎗で激しく攻めたててくる。

 巨大な腕から振り回される鋭い爪が、俺の頬や髪先をかすりはじめた。


「でかいのに俊敏だな、さすがSSランク、やるな! だがまだまだその程度じゃ俺は殺しきれないぜ?」


 凶悪な攻撃にさらされながらも俺は大きなダメージを受けることはなく、激しい攻撃をしのいでいく。

 そして戦いながら同時に、逆転の算段を立てはじめた。


 前に戦った時SSランク・ギガントグリズリーは、俺の必殺技ジャスティス・ラグナロク・ブレイクに2発まで耐えてみせた。


 つまり1体に付きジャスティス・ラグナロク・ブレイクが3発必要になる。

 となると、4体全て倒すのに必要なのは単純計算12発だ。


 ジャスティス・ラグナロク・ブレイクは10発撃つのが限界だから、途中で力が足りなくなってしまう。 


 だから戦況をひっくり返すには、もう一段階上の力の開放が必要だった。


「SSランクを同時に4体も相手にするんだ、俺もある程度腹をくくならいとな――!」


 俺はフゥっと大きく一度息を吐くと、力強く宣言する。


「いくぞ、勇者の真の力を見せてやる――」


 俺は4体のSSランクギガントグリズリーを相手に激しく切り結びながら、勇者の力をさらに高めはじめた。


「勇者スキル『破邪の神楽』発動!」


 スキルの発動を宣言すると同時に、俺は神に奉納する神楽を踊るがごとく、舞うように戦い始めた。

 勇者の力そのものにかかっているリミッターを外す、儀式演武を開始したのだ――!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る