第23話 ギガントグリズリー討伐戦(下)

「いいぜ、だったら俺の必殺技を見せてやる。アンチ・バースト・システム解除! 全リミッター開放! 『破邪の聖剣』ファイナル・ラグナロク・モード発動!」


 俺は戦いながら、『破邪の聖剣』にかかっているリミッターと制御システムを全て解除・開放した。

 すぐに『破邪の聖剣』の刃が猛烈な光でもって輝きはじめる。

 『破邪の聖剣』が俺の持つ勇者パワーをぐんぐん吸って、その真なる力を解放しはじめたのだ。


 グルゥァッ!?


 まばゆい光を目の前で見せられたギガントグリズリーは、攻撃を中断すると慌てて俺から距離を取った。

 未知に対する恐怖心からの、半ば本能的な行動だろう。


 だが、


「ここで距離を取るのは下の下だぜ?」


 俺はギガントグリズリーが警戒して様子見しているのを尻目に、『破邪の聖剣』にどんどんと力を注ぎ込んでいく。


「さぁ受けてみろ、勇者の超必殺技を――! ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」


 太陽のごとく光り輝く『破邪の聖剣』を上段に振りかぶると、俺はそれをギガントグリズリーに撃ち放った。


 目を開けていられない程の光の奔流が、ギガントグリズリーに向かってほとばしると、巨大な光はギガントグリズリーを一気に飲みこんだ。


 グルゥァァァァァァァッッッ――――――!!


 断末魔のような耳をつんざく悲鳴が聞こえ――しかし光がおさまった時、ギガントグリズリーはまだそこに立っていた。


 前かがみになり、太い両腕で顔を覆うように防御して、勇者の超必殺技たるジャスティス・ラグナロク・ブレイクに耐えきってみせたのだ。


「そんなぁ!? Sランクの魔獣も一撃で消滅させるおにーさんの超必殺技が効かないだなんて!? 逃げておにーさん!」


 大樹の陰から顔を出して俺の戦いを見守っていたたアリスベルの、悲壮な叫び声が聞こえてくる。


 ギガントグリズリーもどうだと言わんばかりに、ニヤリと見下すように笑って――、


「ははっ、なに勘ちがいしてやがる。たった1発耐えたくらいで調子に乗ってんじゃねーぞ?」


 俺はそれを軽く鼻で笑ってやった。


 ガルッ?


「じゃあ2発目だ。今度もちゃんと耐えてみせろよ? ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」


 太陽のごとき光り輝く光の奔流が、再びギガントグリズリーに向かってほとばしり、その巨体を飲みこんだ。


 グル、グガルル……。


 ギガントグリズリーは痛みに苦しむようなうめき声をあげながらも、それでも2発目のジャスティス・ラグナロク・ブレイクにも耐えきってみせた。

 しかしその身体は既に力を相当に失っていて、自慢の剛毛は一部消失し、あちらこちらから出血をしている。


「本当にやるじゃないか。じゃあ3発目だ。今度も耐えてみろよ? ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」


 俺は三度の光の奔流をギガントグリズリーに向かって打ちこんだ。


 そして間髪入れずに3連打で放たれたまばゆい光の奔流の中で、ついにギガントグリズリーは力尽き、光の中に消え溶けていったのだった。


「悪いけど、俺は昔から馬力だけは歴代最強だって言われてるんでね。超必殺技のジャスティス・ラグナロク・ブレイクも連続10回ぶっ放すくらいなら余裕なんだよ。つまりたった3回で耐えられなくなる程度じゃ、逆立したって俺には勝てないさ」


 俺は右手に持った剣を意味もなく肩に乗せると、さらに意味もなく左手で髪をかき上げた。

 つまり軽くカッコをつけながら、アリスベルにしっかりと聞こえるようにアリスベルの方を向いて、ものすごいドヤ顔でカッコいい勝ちゼリフを言った。


 SSランク魔獣ギガントグリズリーは、こうして俺――勇者クロウによって討伐されたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る