異世界信仰

葵流星

異世界信仰

つらい…。


何が…とは言わないが、とてつもなくつらい。


なぜ、俺はこんなにつらい世界で生きているのだろうか?

そう思う。


「…。」


今日は、大学から家に帰って、今は夜。

日付を少し越え、早めに寝ないと朝が辛くなる。

なのに、こんなどうしようもなく自分が惨めな気持ちなのはこうした生活のせいなのかもしれない。

就活、論文、それとバイトと…色々なやるべきことがある中、俺は現実逃避とばかりにスマホでSNSを見ていた。

面白そうな出来事が毎日、起こるはずもないのにだ。


翌日

大学生に大事な就職活動の面接で、こってり絞られた俺はかなりしんどかった。

深呼吸しても楽にならなかった。


変な話だが、俺の人生はなんでこんな未来の見通しが不明のままなのだろう?


そもそも、受かる面接を1つだけ受ければ、この面接が必要なかったと思う。

この世界は、いつだって不透明でギャンブル状態だ。

予測してもブラックボックスで、あるはずの結果はいつも遠くだ。

なんで、先人達は就職活動なんてものを生み出したのだろう?

試験ならいいが、面接は地獄だ。

文章なんかどうでもいいというか、書きたくない。

少なくとも、そんな武人か、真面目な奴みたいな文章は書けないし、噓をつくのだって良い噓が思いつかない。


就職活動の何が楽しいのか?


楽しくない。

きっと、企業が苦行耐性があるのかどうなのか調べてるだけだ…。


…っと、言っても他に手段が無いのでやらざるをえない。

学歴で勝負するには分が悪すぎる。

だが、実際…このままでいいのかと疑問に思う。


動画をたまに見ると出てくる中華系のゲームコマーシャルは、概ね正しい。

金、車、女…男性に必要な要素がゲーム内で手に入ると教えてくれるからだ。


滑稽だとは、思うがおそらくそれが正しい。

俺も何か魔法や魔術の特技かチート性能を持って、そういった物を手にしたいと思う。


人がそういうのを努力なしに手に入れるのを嫌だが、もしそうなったら俺は幸せだろう。


何より、その世界がこの世界ではなく、知り合いのいない異世界なら自分は幸せを手に入れられると思う。

むしろ、この世界なんかいらない…。


愛すべき人もいない、家族は過去のものにして、幸せを手に入れられるのなら喜んでこの世界を手放すだろう…。


ただ、そう思って…今日も夜遅くに眠った。


翌朝、謎の怪文書があった。

内容は『異世界信仰』という、異世界に対する人の信仰が異世界を作るという内容のようだった。


興味本位で少し読み、大学から家に帰る途中だった。


端的に言えば、俺は死んだ。

死因?

それは、よくわからなかった。

ただ1つ言えるのは、俺の身体の頭部が切れているのか、押しつぶされたのかわからない。

ただ、首から繋がっていなかった。

高速道路の高架下で、俺だけでなく他の人々の身体が砕けていた。


なぜか、俺は肩の荷が下りたように異世界へと誘われた…。

そして、女神から話を聞き、権能や加護を授かり使徒として、その世界へ降りて行った。


今、俺は幸せだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る